事例解説｜理念を体系化する企業文化研究所人事企画コンサルタント社会保険労務士事務所

新しい基本給と手当の構成、金額が決まったら、社員一人ひとりについて、現行の賃金から新賃金への移行作業を行います。

今回はこの新賃金への移行作業を取り上げます。

次のとおりです。

現行の賃金　－　新手当　＝　新基本給への移行原資

新基本給への移行原資

自社の基本給管理区分（資格、等級など）に照らして該当する区分に当てはめ

・新基本給の下限金額に届かない場合には、下限金額に追いつかせるための持ち出し（会社の追加負担）が発生し、

・新基本給の上限金額を超えてしまう場合には、超過額を当面は調整手当などとして支給することで、現行の賃金額を保障する

基本的な考え方は上述したとおりですが、以下2点補足します。

「新手当」について、

① 現行にはない手当を新設した場合や

② 現行の手当を増額した場合

には、上述した基本的な考え方だけでは不都合が生じます。

合理的な目的があって手当の新設や増額を行ったにもかかわらず、手当が増加した金額分だけ新基本給への移行原資が減額する結果となり、差し引きすると現行の賃金額のまま増加額は０（ゼロ）となってしまうからです。

従ってこのような場合には、手当の増額分は別枠で管理する必要があります。

新手当のうち、

① 現行にはない手当を新設した場合の手当金額

② 現行の手当を増額した場合の増加額

①と②は別枠で管理する

現行の賃金　－　新手当（①、②を除く）　＝　新基本給への移行原資

新基本給への移行原資

自社の基本給管理区分（資格、等級など）に照らして該当する区分に当てはめ

・新基本給の下限金額に届かない場合には、下限金額に追いつかせるための持ち出し（③）が発生し、

・新基本給の上限金額を超えてしまう場合には、超過額を当面は調整手当などとして支給することで、現行の賃金額を保障する

持ち出し額は①＋②＋③となる

基本的な考え方により算出された「新基本給」は仮のもの（仮格付け）であり、最終的には社員一人ひとりの「仮基本給」を精査のうえ、調整する必要が生じる場合もあります。

例えば、現行の手当を廃止した場合には、その廃止された手当の金額は仮基本給の中に含まれています。そのまま新基本給として最終決定（本格付け）してよいのかどうか、判断する必要があります。場合によっては、この部分の金額も「調整手当」として当面保障の対象とするという判断もありえます。

「調整手当」については段階的に縮小していくべきものです。

調整手当	① 自社の基本給管理区分（資格、等級など）に照らして、本人の基本給が超過してしまっている部分
	② 支給の合理性がないとして廃止された旧手当部分

①の場合の縮小の仕方ですが、

本人の基本給管理区分（資格、等級など）が上昇（昇格）し、基本給の昇給が可能となった時点で基本給の昇給額と調整手当を相殺していく

という方法が無難ではあります。

しかし、現実に本人の昇格の可能性が低いと見込まれるような場合には、数年かけて調整手当を減額していくという方法を採らざるをえないような場合もあります。

なお、調整手当の内容が②のみの場合には、基本給が上限金額に到達していることはありませんので、上述した基本給の昇給額と調整手当を相殺していく方法を優先的に考えることとなります。