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第30回  2012年11月号

〜人事制度が効果を上げるには何が必要か?〜

はじめに

「人事制度を導入、改定したが社員の行動にあまり変化が見られない」というご相談を新規のお客様から最近よくいただくようになりました。新しい人事制度を導入したり、既存の制度を大きく改定するのは社員の行動に大きな変化を創り出すためです。それが実現できていないということは「人事制度が効果を上げていない」ということです。

そこで今回は人事制度が効果を上げるには何が必要なのかについて考えてみたいと思います。

「どのような組織、会社にしたいのか」をそもそも明確にしているか?

上述のとおり、新しい人事制度を導入したり、既存の制度を大きく改定するのは社員の行動に大きな変化を創り出すためです。これを実現するうえでの出発点は「どのような組織、会社にしたいのか?」ということを明確にする、ということです。この目標を設定することなくして社員に何を期待するのかが定まるはずもありません。そして、「どのような組織、会社にしたいのか」が明確に定まったら、それを実現するうえで必要な対策のうち「社員に期待すること」を発表することとなります。通常はこの部分が人事考課(評価)の基準となります。そしてさらに公正な処遇を行うため、また「社員に期待すること」への積極的な取り組みを促すインセンティブとして、考課(評価)の結果を月給や賞与に反映させることとなります。
以上を図解すると次のとおりです。

ステップ1:どのような組織、会社にしたいのか? ステップ2:必要な対策のうち「社員に期待すること」=人事考課(評価)の基準 ステップ3:考課(評価)結果の月給、賞与への反映 公正な処遇の実現、インセンティブ
人事制度とは上記1、2、3を体系化したもの=一貫性を持たせて制度化したもの、です。

人事制度が効果を上げていない原因の多くは、上記1と2の部分の検討不足にあります。1の部分が漠然としたままであったり、1の部分と2の部分がストンとつながっていないといったケースが多いというのが実感です。その一方で、3の部分には度重なる改定の跡がみられるなど、多大な労力が投入されているようです。そこには「公平さに対する社員の疑念を払拭すれば社員は納得してついてきてくれるだろう」「信賞必罰を徹底すれば社員の行動は変えられるだろう」という意向が見て取れます。しかし、いくら月給や賞与が公平に決まる(と会社としては思っている)しくみを整えても、どのような組織、会社にしたいのか、また社員に期待することは何なのか、がわかりやすく発表されていなければ、社員の行動が変わることはありません。このような場合にはまず、どのような組織、会社にしたいのかを、“自社独自の言葉で語ること”と“それを少なくとも役員および幹部社員の間で共有すること”に取り組む必要があります。また、信賞必罰を徹底すれば社員の行動は変えられるだろう、という考えにも限界があることを理解する必要があります。夢や希望、共感といったものがなく、他人から強制されたものでは決して行動は長続きしないからです。

まとめ

人事制度は月給や賞与を決めるためだけのしくみではありません。会社が目指す方向に社員の行動を方向付けるための基盤=インフラです。そのインフラが有効に機能するかどうかの出発点は、「どのような組織、会社にしたいのか」を“自社独自の言葉で語っているか”“それを少なくとも役員および幹部社員の間で共有化しているか”どうかにあります。
みなさんの会社でも「思うように社員の行動が変わらない」とお考えの場合には、この点の振り返りから是非始めてみてください。

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