給与制度とは、社員に支払う給与額を決定するしくみのことを指します。
給与制度を構築するにあたっては、基本給と手当の構成をどのように考えるか、定期昇給と昇格昇給のあり方をどのように考えるか、などのように様々な事項を決定しなければなりません。
しかし、どのように検討し尽くされた給与制度であっても現実に導入、実行できなければ意味がありません。
そこで今回は現実に導入、実行できる給与制度とするための肝所について取り上げてみたいと思います。
管理監督者とは、労働基準法に基づく1週40時間、1週1日の休日などの保護を受けることがなくなる社員のことを指します。
この管理監督者に登用される前までの社員の給与水準の設定は通常次のとおり行います。
目標水準の決定
… 世間相場や自社の支払い能力などに基づいて決定する
資格・等級などの区分ごとに基本給の下限金額と上限金額を決定
… イメージ
このとき、現実に導入、実行できる給与制度とするための肝所は、資格・等級ごとの基本給の下限・上限金額を現実的なものとする、ということです。
管理監督者登用前の社員は多くの場合が若年層です。新卒あるいはそれに準じる年齢で入社した社員に対しては、毎年一定程度の昇給を行う必要性が高いといえます。そうすると基本給のあり方も上記のように資格・等級ごとに下限金額と上限金額を決める範囲給の考え方を採用することとなります。
この範囲の決定にあたって、現状の給与水準や用意した給与の引き上げ原資を無視してしまっては、現実に導入、実行できる給与制度とはなりません。下限金額に多くの社員が届かない場合には想定外の会社の持ち出しが発生することとなりますし、反対に上限金額を多くの社員が追い越してしまう場合には導入、実行不可能の事態に陥ってしまいます。この点については2019年8月号でも取り上げていますので是非ご参照ください。
管理監督者登用後の社員の給与水準はそれ単独で設定できるものではありません。通常は次のとおり行います。
管理監督者登用直前の給与水準
時間外勤務手当、休日出勤手当
管理監督者としての職責に対する処遇分
管理監督者登用直後の給与水準
この過程を無視した給与水準の設定は、次のような事態を招くこととなります。
従って、管理監督者登用後の給与制度について現実に導入、実行できるものとするための肝所は、上記の過程を正しく踏むことである、ということができます。なお、この点については2012年4月号により詳しく解説していますので是非ご参照ください。
上述したほかにも、人事評価の結果に応じた給与格差の設定、降格制度のあり方、職務給の導入による人事異動の事実上の制約など、現実に導入、実行できるのか、十分な事前検証が必要な事項は数多く存在します。
現実に実行できないことに労力をかけても無意味です。現実に導入、実行できるのか、やり通せるのか、事前に検証、決断しておくことが大切です。