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第91回  2017年12月号

〜現場の力を育てる人事制度へ〜

はじめに

今回は店舗での販売業務や工場での生産業務などの「現業」(現場での業務)に従事する人材の人事制度のあり方について考えてみたいと思います。
これらの現場で働く人材については、

・主として20代の若年・他社での経験者を採用して ・短期間で自社流に戦力化し ・一定期間で入れ替えていく

ことを前提としていた会社も多いことと思います。 しかし、次のような問題が生じていないでしょうか?

・従来に比べ応募者の質が低下している ・必要な人員が確保できない ・採用後に会社の期待値をクリアーできない者の割合が高まっている

このような状況が継続すれば現場の力は確実に低下していきます。
いくら本社で優れた戦略を立て、良い商品やサービスを企画、開発しても、会社の力が低下していくことは免れません。

これまでの常識や慣例を捨てられるか?

少子化による従来型の働き手(フルタイム勤務、仕事中心の生活ができる人)の減少はどんなに政策効果が上がっても今後数十年間は続くことが確実です。<はじめに>で述べたような前提にこだわり続ければ会社の力は今後大きく低下していきます。

これまでの常識や慣例を捨て、実行に移す決断が必要です。適性・資質がある人材であれば年齢や経験、フルタイム勤務ができるかどうかなどにこだわることなく積極的に自社に迎え入れることが必要です。

ではどこまで間口を広げるべきなのか? これは採用後にどのような仕事を期待するのか=人材区分に応じて決める必要があります。例えば、フルタイムの少なくとも半分の勤務時間がなければ会社の期待値をクリアーすることはできない、と考える人材区分については、フルタイムの1/2の勤務が可能なこと、が募集の条件となります。

現場で中心となって働いてもらう人材区分はフルタイムの1/2の勤務が最低必要だが、補助者として働いてもらう人材区分は1日3時間・週2日でもかまわない、のであれば中心メンバーと補助者とで募集条件を分けることとなります。

期待値をクリアーできるのであれば限度一杯まで間口を広げることが適性・資質のある人材の獲得につながります。

現場の力を育てる人事制度へ

間口を広げてこれまで自社に迎え入れてこなかった人材を迎え入れるにあたっては、受入体制を整備することが必要です。従来のように短期間で戦力化することは無理と考えなければなりません。
また、採用時の面接だけで適性・資質の有無を見極めることも不可能です。そこで次のようなステップを経て適性・資質の有無を見極め、戦力化していくことが適切ではないかと考えます。

ステップ1:3ヵ月前後の有期契約で採用し、適性・資質の有無を見極める

最低限の現場の仕事を通じてどのように合否を判定するのか? 基準を定めておく必要があります。
合格の場合は次のステップへ進み、不合格の場合は契約期間満了により退職となります。

ステップ2:6ヵ月〜1年程度の有期契約で現場の担当者としての土台、基礎づくりを行う

一人前の現場担当者となるために必要な基本動作を習得します。どのようなことを習得してもらうのか? 基準を定めておく必要があります。
合格の場合は次のステップへ進み、一定回数(2回、3回など)不合格となった場合には契約期間満了により退職とします。

ステップ1の契約を含め3回以上契約を更新した場合および雇用期間が1年を超える場合には雇い止めにあたって30日前までの予告が必要となります(労働基準法14条2項、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)。

ステップ3:一人前の現場担当者としての仕事ができるようになったらできる限り無期雇用へ切り換えていく

一度育てた人材は囲い込み、逃さないようにすることが今後は得策でしょう。法制度上も通算契約期間が5年を超え、本人が希望する場合には無期雇用への切り換えが義務づけられています。
これらの点についての詳細は2017年9月号で詳述しています。是非ご覧ください。

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