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第119回 2020年4月号

〜職務分離〜

はじめに

本年4月1日から大企業に対して同一労働同一賃金のルールが適用されることになりました。中小企業については1年間適用が猶予され、来年4月1日からの適用となります。このところ増えている相談内容に「職務分離」に関するものがあります。職務分離とは「非正規社員に対して、形式的に違った職務を割り当てる形で(同一労働同一賃金)ガイドラインを形式的に守ろうとする」こと、と定義されています(厚生労働省、同一労働同一賃金の実現に向けた検討会、中間報告平成28年12月、4項)。

そこで今回はこの職務分離について考えてみたいと思います。

職務分離の例

小売業の店舗においては多数のいわゆる非正規社員が雇用されています。職務分離の例としてよく用いられるのが、

非正規社員にはお客様からのクレーム対応はさせない

商品の在庫、発注管理はさせない

というものがあります。大規模店舗で常時多数の正規社員が在店しているような状況下では上記の理由づけも説得力を持つ場合があるでしょう。しかし、少数の限られた人数で運営されている店舗の場合を想像してみてください。非正規社員のみで店舗が運営されている時間帯、正規社員は他のお客様の接客中で対応できるのは非正規社員のみ、という状況も当然存在します。このときお客様からのクレームがあった場合、「私は非正規社員なので対応できません」と断れますか? また、団体のお客様が来店されて一度に多くのお買い物をされ、特定の商品の在庫がほとんどなくなってしまった場合、発注しなくてよいと言えるでしょうか? どちらも現実には非正規社員といえども対応せざるをえません。

このようにして非正規社員と正規社員との仕事内容の垣根は徐々になくなっていき、当初行った「職務分離」は全く意味のないものとなっていくのです。

まとめ

上記の例は一例にすぎません。

大切なのは「職務分離」を現実に当てはめた場合の結果を想像することです。

正規社員と非正規社員の待遇差を自信を持って説明しきれる根拠となるのかどうか、よく考えてみる必要があります。

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