本年1月号でも述べたとおり、「手当」は「基本給」だけでは社員に報いることができないような特別な理由がある場合に限って支給することとする必要があります。そうでなければ「基本給」と「手当」という区分を設ける必要がそもそもなくなってしまうからです。
基本給 | |
月給 | |
○○手当 | |
△△手当 | |
× × 手当 | |
…… |
そこで今回はこの手当の改廃(新設を含む)の考え方について取り上げてみたいと思います。
基本給の「決定基準」と「水準」に照らして手当の改廃を判断することが原則となります。
基本給の「決定基準」については前月号で取り上げましたが、「当社においては何に基づいて基本給を支給するのか?」ということです。基本給の支給意義ということもできます。
一方、手当にもそれぞれ支給意義が存在します。「何の目的でその手当を支給するのか?」ということです。
基本給と手当の支給意義が重複する場合には、その手当は廃止の検討対象となります。例えば「当社の基本給は役職に応じて支給することを基本とする」という場合に、「役職手当」を別途支給する理由は希薄です。また、「当社の基本給は3人世帯の標準的な生活費を誰もがクリアできる最低保障の考え方を採り入れている」という場合に、扶養家族2人までの「扶養手当」を別途支給する理由も希薄でしょう。
基本給の「決定基準」(支給意義)と重複する手当は廃止を検討することとなります。
次に基本給の「水準」について説明します。
手当には基本給の加算機能があります。
手当の支給対象となる人 |
手当の支給対象とならない人 | |||
手当 | ||||
基本給 | 基本給 |
例えば、東京に代表される都市部の家賃負担は重いです。新入社員をはじめとする若手社員の基本給「水準」を全員家賃を払ってもびくともしない金額にできる会社は稀でしょう。このとき、基本給とは別に「家賃手当」を設定することによって、家賃負担がある社員にだけ基本給水準を加算することができるようになります。これによって全社員の基本給水準が自社にとって重すぎるものとなることを避けつつ、家賃負担の重い社員のニーズにのみ応えることができるようになります。これが手当による基本給の加算機能です。
手当による基本給の加算機能を上手に活用すれば、人件費の総枠を効率的、効果的に使用することができるようになります。
原則となる考え方は上述したとおりですが、その他自社にとって「特別な目的」がある場合には手当を存続または新設する必要が生じることもあります。
例えばシフト制で働く社員にとって、早朝や夜間の勤務はできれば避けたいというのが本音でしょう。会社によってはこのような「できれば避けたい」時間帯に勤務してくれた社員には別途手当を支給することとしている場合もあります。人材の採用や定着の度合いによっても異なりますが、自社にとって必要な場合には必要な手当ということができます。
手当の改廃の考え方は次のとおりまとめることができます。
原則 |
・基本給の支給意義と重複する手当 → 廃止を検討する ・手当による基本給の加算機能を活用することが自社にとって効率的、効果的な場合 → 手当を存続または新設する |
その他「特別な目的」 |
・「目的」に合わせた手当を存続または新設する |