事例解説

ホーム > 事例解説 > 第44回 2014年1月号

第44回  2014年1月号

〜賃金管理の横軸を変えていく〜

はじめに

自社の賃金、特に月給の水準を一覧化しようとするとき、縦軸(Y軸)に金額を設定するのは当然ですが、横軸(X軸)には何を設定しますか?多くの方が「年齢」あるいは「モデル年齢」と答えるのではないでしょうか?賃金管理のあり方について年功序列からの脱却が叫ばれて久しいですが、「なかなか思うとおりにはなっていない」とお考えの会社も多いのではないかと考えます。その原因は"賃金管理の横軸(X軸)がまだまだ年齢中心であるため"です。

そこで今回は、賃金管理の横軸(X軸)を年齢中心のものから脱却する手法について考えてみたいと思います。

モデル年齢を基準にした賃金設計が年功序列型賃金管理の根本原因

新しい人事・賃金制度を構築しようとするとき、まず社員の処遇の高さを決める人事処遇の基準づくりから着手するのが通常です。その次に人事処遇の基準の中のどの段階(資格や等級)に個々の社員を位置づけるのかを決定する人事考課制度の設計を行います。そして最後に賃金制度の設計を行うというのが最も多いケースといえます。

賃金制度の設計の仕方として従来から最も多く用いられている手法が“モデル年齢を基準にした賃金設計”です。概略を紹介すると次のとりです。

上記のとおり“モデル年齢を基準にした賃金設計”では、賃金管理の横軸(X軸)が年齢中心であることがおわかりいただけると思います。もちろん、社員一人ひとりについては人事考課の結果によって賃金に差がつきます。全員がモデル年齢どおりに昇格・昇進し、モデルどおりの賃金が得られるわけではありません。しかし、モデル年齢・モデル年数を大幅に無視した賃金運用がそもそもしにくいしくみであることはまちがいありません。“モデル年齢を基準にした賃金設計”が年功序列の賃金管理の根本原因となってしまうのは、賃金制度を設計する段階で賃金管理の横軸(X軸)を“年齢”としてしまうためです。

本来この賃金管理の横軸(X軸)は人事処遇の基準で設定した資格や等級ごとのレベルでなければなりません。

変質するモデル年齢の意味、まとめ

“モデル年齢を基準にした賃金設計”は、正社員中心、終身雇用を前提としていた時代には合理的な賃金設計の手法であったといえます。しかし、今日では折角人事処遇の基準で設定した会社の処遇方針の意義を減殺させ、年功序列型の賃金管理からなかなか抜け出せない根本原因となってしまいます。今後の賃金制度を設計するにあたっての賃金管理の横軸(X軸)は人事処遇の基準で設定した資格や等級ごとのレベルとすることが大切です。このように考えますと、モデル年齢の意味も必然的に変質していくものと考えられます。モデル年齢は従来は賃金管理の横軸(X軸)の中心でした。しかし今後は、人事処遇の基準で設定した資格や等級ごとのレベルを横軸(X軸)にした賃金設計を行った後に、「この資格や等級には何才くらいで昇格・昇進してほしい」といった会社の期待を後から補記するといった対処の仕方の方が適切といえるでしょう。このように

モデル年齢の意味を従来の賃金管理の横軸(X軸)の中心から、“一つの目安”にすぎない従属的なものに変質させていくことが年功序列型の賃金管理から脱却するポイントとなるものと考えます。
テーマ別索引
ページの先頭に戻る

企業文化研究所 〒162-0822 東京都新宿区下宮比町2-28 飯田橋ハイタウン206号室 TEL.03-6265-0805