個人も組織も目的・目標がなければ、生きがい、働きがいを感じることはできません。また、目標とは未だ実現できていない“願望”ですから、ただ念じているだけで実現することはありません。経営者も「このような社員、会社になってほしい」という思いをみなさんお持ちのことと思います。その実現には「P」「D」「C」「A」のサイクルが必須であることは前月号で解説しました。
そこで今回はこの中の最重要部分である「P」(計画)の実務手順について解説します。
よろしくお願いします。
「P」(計画)とは ・目標を明確に定め ・その実現手段を計画すること です。そして、「その実現手段の計画」とは、目標と現状との“落差”、すなわち「課題」を明らかにすることから始まります。社員教育に限らず、経営活動のあらゆる場面で計画を策定する機会がありますが、実用性のある計画、「P」「D」「C」「A」のサイクルが有効に機能する計画はすべてこの「課題」の部分が極めて的を得ているものばかりです。
社員教育の計画策定にあてはめてみますと次のとおりです。
上記のうち、“「整理」と「定義」がポイント”について補足します。
「整理」とは、“欲張りすぎない”ということです。「あるべき姿」に照らして考えれば、“あれもこれもすべて”と考えがちですが、冷静に考えて“優先順位が高いものから”“しかしスピーディーに”と実行した方が賢明です。
「定義」とは、“ねらいをはっきり絞る”ということです。何をねらいとするのか誰が見てもわかるように“わかりやすく”“簡潔に”定義することが必要です。
次の手順により進めます。
人事考課(評価)の基準は、自社の理念を実現するために「期待する人材像」を日常業務のレベルにまで落とし込んだものです。また、当面優先すべきことや実務の変化などに応じて数年ごとに見直しされるものであることから、「当面の目標とする人材像」の定義としては最適なものです。社員教育の計画期間も3年程度とし、「P」「D」「C」「A」をスピーディーに回転させてレベルアップを図ることが肝要です。会社の中期経営計画の期間が3年程度であることから考えてもこのことは当然といえます。
この部分が一般的には「社員教育体系」と言われるものです。大切なのは“ただ見栄えのする絵を描いて終わり”にしないことです。目的は上述したプロセスを通じて把握した課題を“解決すること”です。
従って、ポイントは
ということです。有効な“処方箋”とするためには次のステップを踏む必要があります。
課題を解決するために有効と考えられる“施策”を考えられるだけピックアップする。研修やOJT(実務を通じた教育)だけでなく、必要な会議体の設置、プロジェクトチームの組成、イベントや制度の企画なども含めて可。
優先順位が極めて高いものだけに絞り込む。時間や予算に限りがあることから考えて、「ぜひこれだけは」というものから“実行すること”を優先する。
“施策”の実行方法を考える。次の5つの事項を決めることを基本とする。
[ 1 ] 何を
[ 2 ] 誰に対して
[ 3 ] 誰が
[ 4 ] どのように
[ 5 ] どのタイミングで
経営者であれば「このような会社にしたい」という思いを誰でも持っています。中期経営計画を立てられていらっしゃる方も多いことと思いますが、それを実現するのは社員です。社員のレベルアップが経営者の思いや夢を実現するのです。
社員教育も目的・目標を明確に定めて、3年程度の計画期間で「P」「D」「C」「A」をスピーディーに回転させればその効果は着実に目に見えるものとなります。
次回は社員教育の実例を取り上げます。
ご期待ください。