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第64回  2015年9月号

〜賃上げが可能なときこそ給与体系見直しのチャンス〜

賃下げを目的にした見直しは成功しない

会社の業績や経済情勢が厳しくなってから給与体系の見直しに着手しても、中長期的に会社の発展を支える土台とはなかなかなりえません。このような状況下での見直しは、多くの場合賃金の全体原資の縮小を目的とせざるをえず、社員のやる気を失わせてしまうからです。給与体系の見直しとは、賃金の全体原資の配分方法の見直しですから、会社への貢献度が低いと考えられる特定の集団、グループについては、賃下げを必要とすることも当然考えられます。このような場合でも、全体として賃上げが可能なときであればこれら特定の集団、グループに対しては「賃上げしない」という選択をすることで実質的には賃下げと同じ是正効果を得ることもできます。会社の業績や経済情勢が厳しくなる前に、自社に合った給与体系の土台を整備しておくことが成功のための1つのポイントといえるでしょう。

社員の処遇と会社への貢献度のバランスを考えた給与体系の構築が必要

90年代初頭までの職能資格制度があたりまえだった時代には、社員の処遇に偏りすぎた給与体系も多く見られました。中には一般社員であっても部長と全く同じ基本給が得られるといった例もあったくらいです。これなどは社員の処遇を重視するあまり、会社への貢献度を無視してしまっている給与体系といってもよい例でしょう。

このような反省とバブル崩壊といった経済情勢の変化から、その後は職務給や役割給といった仕事や責任に応じた給与体系への転換が急速に進みました。そらからさらに10年、15年と時間が経過した今、「特定の層」に人材が滞留し、その中での処遇の不公平感や、モチベーションを維持するうえでの問題が生じている会社も多く見られるようになってきました。ここで「特定の層」とは、ポスト数が限定される「直近下位の層」のことを指します。例えば、部長職の直近下位の「課長相当職」などが該当します。

このように給与体系のあり方の歴史を振り返ってみますと、社員の処遇に偏りすぎても会社への貢献度にこだわりすぎても問題を生じるといえると考えます。
『社員の処遇=給与の高さ を管理する軸=資格』『会社への貢献度=仕事や責任 の単位=職位(職務、役割)』とがゆるやかに連動した給与体系

というものがやはり妥当なのではないでしょうか。例えば、同じ課長相当職であっても上・下2つの資格と連動させることで会社への貢献度に応じたメリハリをつけることが可能となります。さらに、同じ課長相当職であっても役職手当の金額に幅を設けることを加えれば、実質的には職務給や役割給といった仕事や責任に応じた給与体系と変わらない効果を得ることも可能となります。

まとめ

社員の処遇に偏りすぎても会社への貢献度にこだわりすぎても人材の有効活用にはつながりません。適材適所の人材配置、最適な組織編成を柔軟に行いながら、社員のモチベーションを維持していくためには、社員の処遇と会社への貢献度のバランスを考えた給与体系を、賃上げが可能なときにこそ行うべきであると考えます。
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