9月を迎え、半期に一度の考課者研修の季節となりました。
スポットでの考課者研修の依頼案件の中には、「抽象的な人事考課の判断基準を研修で補うことで、考課者の評価尺度の統一を図りたい」というものがあります。
ご依頼の会社の人事考課の項目は 「仕事の量」 「仕事の質」 「積極性」 「責任感」 「知識」 「判断力」 「折衝力」 「指導力」などの一般的なものであり、これらの項目を 「S:他の模範となるレベルである」 「A:優れている」 「B:期待どおり」 「C:やや劣る」 「D:業務に支障が出るレベルである」といった判断基準で評価する、というものです。
現状は簡単にSをつける人、Bにとどめる人など考課者の評価尺度がバラバラなので、最終的に役員会で相対評価を行って、評価のバラツキを修正しているとのことでした。
※相対評価…評価対象の社員を相互に比較して優劣をつける評価のしくみ。
社員数100人程度までの会社であり、昇給や賞与、昇格などの待遇を決定するためだけであれば現状の考課の方法でも問題はないと考えられます。考課者研修を行うことである程度の評価尺度の統一を図ることは可能ですが、考課の主目的が待遇を決定することであれば、最終的には相対評価を行って考課を決定することがむしろ目的にかなっていると考えられるためです。
社員にとって重要なのは自分自身の待遇です。従って、社員から見れば考課の主目的が待遇決定というのは当然のことでしょう。
しかし、会社にとって重要なのは社員の行動を方向づけていくことです。目指す会社を実現するためにそれぞれの社員に対して行動の指針を人事考課の基準として明示する必要があります。会社にとって待遇はこの方向づけのための手段にすぎません。
待遇決定のためだけに人事考課を行いますか?
目指す会社を実現するために人事考課を行いますか?
どちらを選択するのかによって求められる人事考課のあり方は大きく変わってくるものと考えます。