賃金は仕事の対価です。従って、賃金の水準は仕事に見合ったものであることが大切です。
また、基本給は賃金の本体部分です。従って、基本給の水準は仕事に見合ったものであることが原則となります。
しかし、この原則を徹底させすぎると様々な不都合が生じてきます。
例えば、新卒初任基本給水準には現実に一定の相場があります。新入社員が仕事を覚え、一人前の社員となるまでには一定の年数が必要です。その間、仕事の習熟度は時間とともに上昇していきますが、仕事の難易度そのものは大きく上昇するということはありません。しかし、この間基本給の昇給は全くないとすることは現実的ではありません。仕事を覚えよう、成長しようとする動機づけ(インセンティブ)、現実の生活に要する費用の上昇(結婚、子の誕生など)を考慮すれば、仕事の難易度そのものは大きく上昇することがなくても基本給を昇給させる必要はある、ということがいえます。
このように原則とすべき考え方は維持しつつも、現実との整合性をとるために生まれてきた考え方が範囲基本給です。
・ | 基本給の水準を管理する区分を仕事=職務とは別に設けて |
・ | その区分ごとに基本給の一番低い金額(下限)と一番高い金額(上限)を設定し、その範囲内で基本給を運用する |
・ | 上限に到達しても上位の区分に上がれなかった場合には以後基本給の昇給はない |
という考え方です。
この基本給の水準を管理する区分のことを資格、または等級と呼ぶ場合が多いです。
上述したとおり、資格、等級は仕事=職務の難易度と完全に一致するものではありません。
しかし、それぞれの資格、等級に在籍する社員が人事評価で合格点をとるためにはこのような職務実績が必要である、という要件は明確に定めておく必要があります。
そうでなければ仕事に見合った基本給という原則を全く満たすことができなくなってしまいます。
仕事に見合った基本給という原則をできる限り満たしながら現実との整合性をとるために出現してきたのが資格、等級という基本給の水準を管理する区分なのです。
資格、等級が上位の区分へ上がることを一般に昇格と呼びます。
この昇格は
場合に限って認める、とする必要があります。
人事評価の結果にかかわりなく、同じ資格、等級にもう何年在籍したのだから昇格を認める、ということをしてしまえば仕事に見合った基本給という原則が崩壊してしまいます。
いわゆる年功給になってしまうということです。
仕事に見合った基本給という原則を徹底させたのが職務給です。
どの程度職務給の色彩を強めるべきなのかについては2015年10月号で詳述していますので、是非ご参考にしてください。