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第4回  2010年9月号

〜仕事と給与(報酬、賃金)のバランスのさせ方を考える ケース・スタディー3〜

はじめに

「仕事に応じた給与を支払いたい」というのは現在では経営者共通の認識といってもよいでしょう。しかしながら、15年ほど前までは「年齢給」や「生活保証」といった要素があたりまえのこととして重視されていました。むしろそれが「正しいこと」として行われていたのです。

従って、「仕事に応じた給与」に急に切り換えようとしても、社員に大きな痛みを強いることとなり、結果として会社との間の信頼関係も損なわれてしまうこととなります。

そこで今回は、“この相反する2つの要求を満たす解”をケース・スタディーを通じて考えてみたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

ケース・スタディー3

まず最初に、人事処遇の基準のあり方から考えます。

今回のケースの最大のポイントは次の点にあると考えます。

「安定処遇の軸」と「高職務=高処遇の軸」を2本立てること。

下記に詳細を示します。

「安定処遇の軸」=基本給と連動、「高職務=高処遇の軸」=職務給(「仕事の価値」に応じて決定する給与)と連動

とする。

基本給の運用ルール

とする。

職務給の運用ルール
賞与の運用ルール
「高職務=高処遇の軸」=職務給の部分のウエイトを高くするほど、“仕事に応じた給与”の色彩が濃いものとなる。 ⇒ ウエイト調整を通じて“従来の処遇水準の保証”とのバランスを図ることが可能。
「職務給のダウンなし」とした場合でも、賞与における「A」(基本給配分)のウエイトを小さくすることにより、 ⇒ 年収ベースでは“仕事に応じた給与”を実現することが可能。

次に、人事考課(評価)基準のあり方について考えます。

今回のケースでは「仕事の価値」の測定方法が人事考課(評価)の中心課題となります。
この課題はさらに次の2つに分解することができます。

「仕事の価値」を測定するモノサシ ⇒ 考課(評価)の項目。
“どの時点で”仕事の価値を測定するべきか ⇒ “あらかじめ”か、“実績が出てから”か。

前者については業種や各社の理念によってその内容は大きく異なります。しかし、「仕事の価値」とは“どのような人材を手厚く処遇するのか”ということと同義ですので、その作成プロセスや出てくる結果は「ケース・スタディー1」「ケース・スタディー2」で述べてきたことと大きな違いはありません。

問題はむしろ後者の方にあります。
“あらかじめ”仕事の価値を測定する、というのは「ポストに値段をつける」ということと一緒です。この方法が適するのは次の2つの条件が満たされる場合でしょう。

社内の同じポスト(職位)どうしを比較したときに、その価値=会社への貢献度に明らかな違いがあり、 ⇒ 職務価値の低いポストで高い実績を上げても、職務価値の高いポストで標準的な実績を上げた場合と比べて、その評価は「下」か、最大「イコール」である。
人事異動の“モデル”を考えたときに、職務価値の低いポストから徐々に高いポストへと異動させることが可能 ⇒ 中長期的な視点からの計画的な人事配置が可能であり、人材の質・量ともにある程度の余裕がある。

前者の条件が満たされなければ、職務価値が低いと評価されたポストに就いた社員が大きな不満を持つことになります。
また、後者の条件が満たされなければ異動が事実上の"降格人事"につながったり、経営上の必要に応じて柔軟に適材適所の人材配置を行うことができなくなります。

以上の点から考えますと、仕事の価値は“実績が出てから”測定した方が妥当性が高い、といえるでしょう。
みなさんの会社においてはどちらの方が適切か、一度お考えになってみてください。

次回は“プレイング・マネージャーの評価のあり方”を「ケース・スタディー4」として考えてみたいと思います。よろしくお願いいたします。

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