
ここで人事考課制度の枠組みとは、“考課のくくり方”のことを指すこととします。

上記の例のように、考課のくくり方とは作成すべき人事考課表の数ということもできます。
上記の例では、作成すべき人事考課表の数=資格、等級の数ですが、必ずしもこのようになる場合だけではありません。
以下この点についていくつか例を取り上げます。

2025年9月号で取り上げた例の一つです。
ポスト不足により上位の役職へ昇進できない場合であっても、資格、等級を昇格させることで給与の昇給が止まってしまう事態を回避できるように、資格、等級の数を増やした場合の例です。
一つの役職に上下2つの資格、等級が対応していますが、仕事内容に資格、等級による差がない場合には作成すべき人事考課表の数は役職の数と一致させることが必要です。
仕事内容に差がないにもかかわらず上下2つの資格、等級ごとに人事考課表を作成しようとしても実態から乖離してしまいます。
社員が働くうえでの指針となりません。

2025年8月号で取り上げた例の一つです。
従業員個々人の技量(研究開発の実績)をもって給与の序列を決定したい場合の例です。
このような場合に従業員が在籍している資格、等級によって取り組もうとする研究開発テーマに制限を加えることは適切とは考えられません。
現在在籍している資格、等級にかかわりなく、高い水準の技量(研究開発の実績)が示された場合には、飛び級を含め高い給与を支払うこと目的に合致します。
そのためには作成すべき人事考課表の数は研究開発部門で1つとし、1〜4までの資格、等級共通で同じ人事考課表を適用することとする必要があります。
※ただし、研究開発部門の責任者など部門全体の運営管理、調整を行う役割については別途の人事考課表が必要となります。

2025年8月号で取り上げた例の一つです。
仕事の習熟にそれほど長い時間を要しない業種や職種の従業員について、仕事の安定度をもって給与の序列を決定したい場合の例です。
このような場合、取り組む仕事の内容に資格、等級による差はありません。
1〜4までの資格、等級共通の人事考課表を適用して、合格点を取り続けた場合には資格、等級が上昇していくしくみとすることが目的に合致します。
人事考課制度の構築はまずその枠組み=“考課のくくり方”を決定することから始まります。
どのようなくくり方をすることが
・ 社員が働くうえでの指針となり、
また
・ 自社における給与序列の考え方に合致するのか、
これら2つの点から考課のくくり方を決めていくことが必要です。