前月号では、自社に合った人事制度を構築するための前提となる「正しい要件定義の仕方」について解説しました。人事制度構築のステップとしては次に「新人事制度のあり方を構想する」ステップへと進みます。「新人事制度の基本設計」などと呼ばれることもあります。
そこで今回は、この「新人事制度のあり方を構想する」(新人事制度の基本設計)にあたってのポイントについて解説してみたいと思います。
新人事制度の基本設計は、人事制度の3本柱をどのように構想しているのか?を示したものです。
①人事処遇の基準
(多くの場合「資格制度」「等級制度」などと呼ばれます。)
②人事考課制度
③賃金制度
この3本柱は必ずしも①→②→③の順序で構想することが適切とは限りません。むしろ①→②→③の順序にこだわると、前月号で解説した新人事制度の要件定義の内容が実現できなくなることもあります。新人事制度の要件定義は「目的の明確化」と「基本的価値の反映」の2つを内容とするものですが、このうちの特に「目的の明確化」の方が実現できなくなるということです。
その時点における自社の人事上の課題を的確にとらえること。例えば“仕事と給与をバランスさせたい”とか“プレイング・マネージャーの評価の仕方を一工夫したい”といったことが該当する。
上記例にあげた“仕事と給与をバランスさせたい” “プレイング・マネージャーの評価の仕方を一工夫したい”というケースについて考えてみましょう。これらはどちらも①人事処遇の基準よりも、前者は③賃金制度の方が、後者は②人事考課制度の方が密接な関係にあります。このとき、①人事処遇の基準のあり方から構想を進めますと、どうしても既存の職制や資格・等級制度などに縛られてしまい、本来の目的である“仕事と給与のバランス”や“プレイング・マネージャーの評価の仕方の工夫”といったことの実現が二の次となってしまいます。
“仕事と給与のバランス”であれば③賃金制度から、“プレイング・マネージャーの評価の仕方の工夫”であれば②人事考課制度から着手することがポイントとなるということです。
人事制度の3本柱のうち、後回しにしたものは後から整合性を取るように構想すればよいのです。
なお、経営陣が新人事制度の基本設計の内容の適否を判断するにあたっては、要件定義で明確化した目的がどのように新制度の中で実現されているか?に着目するようにしてください。ストンと腹に落ちる内容であれば効果が期待できる制度となるでしょう。そうでない場合には構想する順序を間違えている可能性があります。
新人事制度のあり方の構想は、人事制度の3本柱のうち、新人事制度を通じて何を実現したいのか、最初に明確化した目的と最も密接な関係にあるものから着手することがポイントです。そうすることで最初に明確化した目的の実現を最優先した構想ができるようになります。人事制度の3本柱のうち、後回しにしたものは後から整合性を取るように構想すればよいのです。①人事処遇の基準→②人事考課制度→③賃金制度の順序にこだわるとかえって最初に明確化した目的の実現が二の次となってしまうこともあります。また、経営陣が新人事制度の構想の内容の適否を判断するにあたっては、最初に明確化した目的がどのように新制度の中で実現されているか?に着目するようにしてください。ストンと腹に落ちる内容であれば効果が期待できる制度となるでしょう。そうでない場合には構想する順序を間違えている可能性があります。