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第70回  2016年3月号

〜賃金制度=実行化可能な処遇方針の体系化〜

はじめに

賃金制度を改定したものの、現実には導入できていない、または運用が形骸化してしまっているという事例は決して少なくありません。賃金制度は社員個々人の賃金額を決めるという、社員にとっては最も重要な会社のルールです。従って、この賃金制度への信頼が損なわれると、評価制度への社員の取り組み姿勢も真剣さを欠いたものとなり、人事制度全体がほとんど意味を持たないものへと変質していきます。

そこで今回は、賃金制度を形骸化させないためのポイントについて考えてみたいと思います。

ポイント1:実行できるかどうかをよく考える

賃金制度を改定する場合、「現状の賃金の運用ルールがこのように変わる」という部分が必ず存在します。「評価の結果が悪い場合には月給が下がるようになる」とか、「大きい営業所から小さい営業所へ異動となった場合には月給が下がるようになる」といったようにです。このとき、「考え方としてはよい」と思っても、それだけで賃金制度の改定を決断することは絶対に避けなければなりません。現実に実行できるかどうかをよく考える必要があります。例えば、「月給が下がる」というのは社員の生活や意欲にも大きなダメージを与えるものです。通常は真に必要やむをえない場合に限って行われるべきものでしょう。「賞与で差をつける」「月給の昇給を抑える」など他の手段ではダメなのか、よく考える必要があります。これらの検討をすることなく、「考え方としてはよい」→直ちに「賃金制度の改定を決断」しても、現実には導入できなかったり、運用が形骸化するという事態を必ずもたらします。

ポイント2:職種や階層別に分けて処遇方針を考える

上述のとおり、賃金制度を改定する場合には「現状の賃金の運用ルールがこのように変わる」という部分が必ず存在します。会社の処遇方針の変更ポイントといってもよいでしょう。このとき、この会社の処遇方針の変更ポイントは主として誰を対象としたいのか?という点についても必ず振り返る必要があります。例えば、営業職や管理職といった限られた職種や階層を対象として現状の賃金の運用ルールを変えたいと考えているにすぎないような場合に、他の職種や階層にまで賃金制度改定の対象範囲を広げてしまうと、結局導入や運用ができずに終わってしまったという結果をもたらしかねません。

まとめ

賃金制度とは、実行可能な処遇方針を体系化したものでなければなりません。この実行可能性、必要性の十分な検討なくして行われた賃金制度の改定は、必ず現実には導入できない、運用が形骸化するといった事態をもたらします。賃金制度への信頼が損なわれれば評価制度への社員の取り組み姿勢も真剣さを欠いたものとなり、人事制度全体がほとんど意味を持たないものへと変質していくのです。
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