社員数が10人〜20人程度であれば、一人ひとりの仕事内容や責任の重さ、成果の度合いなどを考慮、比較して給与額を決めることができます。しかし、50人、100人となるとどうでしょうか?上述したような個別の決め方ではむずかしくなってくると思います。入社の時期も3年前の人もいれば今年の人もいます。入社の時期による、会社の規模・業績による不公平が生じてしまう可能性もあります。
このとき、給与を決めるためのルールがあったらどうでしょうか?このような仕事、責任をお願いする人にはこの程度の給与額を、というルールです。
給与決定のルールがあったとしても、その内容が全く社員に知らされていなければ「自分自身の待遇は他の人と比べてどうなのだろう?」という疑問が生じてくるのは自然なことだと思います。この疑問を会社や経営者に質問してくる人も出てくることでしょう。
このような状況になってくると、給与決定のルールを社員が納得できるようなかたちで公開しなければ、という動機が働いてきます。
全てを公開することはできないかもしれませんが、「うちの会社ではこれだけの給与の段階があって」「評価はこのように決めます」「評価の結果はこのように給与に反映させます」といった程度のことは公開しなければ社員の納得は得られないな、という考えを持つに至ります。
給与決定の基本的なルールを社員に公開し、理解が得られたとしても、経営者としては社員一人ひとりに対して仕事への意欲を維持し、さらに高めてもらいたい、と考えるのは当然のことでしょう。毎日意欲を維持し続けるというのはむずかしいことです。しかし、そうしなければ会社を維持し、さらに成長させることは望めないからです。
このような状況になってくると、社員の意欲をより高め、引き出すためにはどうすればいいか?と考えるようになってきます。目標管理制度の導入や、成果主義に基づく給与制度の導入などはその例ということができます。
社員の意欲をより高め、引き出す人事制度を導入したとしても、その意欲の方向が経営者の目指す会社の方向性と一致していなければ望む結果(=目指す会社の実現)を得ることはできません。
このような意識を経営者、会社が持つようになってくると、「日々の仕事の中でこのような考え方や行動をとることが目指す会社の実現につながる」というものが、その会社の経営基本戦略、方針として明確になってきます。“自社における成功のシナリオ”ということもできます。
目指す会社を実現するための行動が社員に浸透、定着してくると、その行動をより高いレベルで実践するための“自育”が行われるようになってきます。
※自育=社員が自分で自分を育てること。
目指す会社を実現するための行動が社員に浸透、定着しているとは、社員と会社の間で仕事上の目指す方向性が一致している、ということです。
このような状態になってくると、仕事は会社から与えられたものではなく、自分自身の働く目的となってきます。
このような状況下では社員は自ら進んで自分をより高めるための学習を自分自身の選択で行うようになります。そしてそれは他社が容易に真似ることができない企業文化として会社の競争力の源泉となります。
もちろん“目指す会社”が社員にとっても魅力のあるものでなければそのような求心力を発揮することができないのはいうまでもありません。
当研究所は人事企画コンサルティングを通じて経営者のみなさんの理念を体系化し、優れた企業文化の形成に貢献します。