基本給の設計にあたっては、まず「どの程度の金額水準を目標とするのか?」を決める必要があります。
これは世間データや生活に必要な費用、自社における処遇方針などに基づいて決定します。
具体的には次のとおり、基本給の水準を管理する区分(資格、等級など)ごとに基本給の下限と上限の高さを決める、ということです。
区分の数だけこの作業を繰り返す
ポイント
次のとおり、概算でよいのでこれによってどの程度の基本給の持ち出し(新たな負担)が発生するのか、把握しながら作業を進めます。 |
区分ごとの人数×区分ごとの基本給水準の引き上げ額=区分ごとの基本給の持ち出し額 |
区分ごとに合計すれば全体の持ち出し額の概算を把握できる |
持ち出し額が過大となりすぎるような実行不可能な目標水準を決めても全てやり直しとなってしまうからです。 |
資格、等級などの基本給の水準を管理する区分について、「それぞれの区分を何年で卒業し、上位の区分へと昇格していくことを期待するのか?」を決めます。これを「モデル在籍年数」と呼びます。
「モデル在籍年数」が決まれば「モデル定期昇給額」は自動的に決まります。
具体的には次のとおりです。
(モデル上限−下限)÷モデル在籍年数=モデル定期昇給額
区分の数だけこの作業を繰り返す
◎ | モデル定期昇給額とは、 人事評価で会社の期待どおりの評価を得た場合の 基本給の定期昇給額のことです。基本給の設計はまずこの「モデル」を基準にして行い、良くも悪くもモデル外の場合の取り扱いは後で決めます。 このことによって設計途上でのわかりさすさが増すとともに、作業効率も向上します。 |
以上によって「モデル昇格昇給額」も自動的に決まります。
次のとおりです。
区分の数だけこの作業を繰り返す
注意点
残業手当や休日出勤手当といった保護がなくなる管理監督者への昇格昇給額については一定の検証をしておく必要があります。 残業手当、休日出勤手当が支給されなくなることによる減収を防ぎ、また労働基準法上の管理監督者の要件を満たす必要があるためです。 この点の詳細については2012年4月号で解説していますので是非ご覧ください。 |
前述のとおり、基本給の設計はまずモデルを基準にして行い、良くも悪くもモデル外の場合の取り扱いは後で決めたほうがわかりやすく、また効率的です。
モデル外の定期昇給額の取り扱いは次のとおり決定します。
・ | 人事評価が良い場合 |
モデル定期昇給額+α | |
・ | 人事評価が悪い場合 |
モデル定期昇給額−α | |
※制度としては昇給なしや減額もありえます。 |
モデルおよびモデル外を含めた定期昇給額は「賃金表」を用いて管理することをお勧めします。
※「賃金表」については2022年10月号で取り上げていますので是非ご覧ください。
賃上げへの対応を考えますと、今後は3年〜5年程度に1回の基本給の再設計が必要になると考えられます。
賃金表を用いた基本給管理を行ったほうがその際の作業負担が楽になるためです。
モデル外の昇格昇給額の取り扱いについては次のとおり2つの考え方があります。
1. | モデル昇格昇給額と同額を昇給させる。ただし、それでも上位の区分の基本給の下限に届かないときは下限まで昇給させる(モデルよりも早く昇格した場合など) |
2. | 上位の区分の基本給額のうち最も近い金額であり、かつ昇格前の基本給額が低下しない金額に位置づける。従って、昇格昇給なしもありえる(モデルよりもかなり遅れて昇格した場合など) |
※なお、どちらの考え方を採っても上位の区分の基本給の上限を上回る昇給は行いません。
昇格への意欲づけという点から見れば1のほうが優れています。しかし、上位の区分へ昇格後、すぐに上限に到達してしまって以後さらに昇格しない限り基本給の昇給はなしとなりやすいということも考えておく必要があります。
それぞれの区分の基本給の下限、上限の関係などもよく見極めたうえでどちらの考え方を採るのかを決めることが大切です。
全社員を作成した賃金表に当てはめることによって新基本給への移行を行います。
これによって最終的な持ち出し額も確定します。