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第105回  2019年2月号

〜人材区分起点の人事・給与管理システムへの転換を〜

働き方の多様化 → 生活保障の考え方の多様化へ

給与には「生活の糧」と「働く意欲づけ」という2つの意義があります。両者を満たしてはじめて“適正な給与である”ということができます。
従来は「一家の大黒柱(夫)が家族(妻、子供)の生活を支える」という考え方があたりまえでした。
従って、

ことを前提とした人事・給与管理システム一本でよかったわけです。補助的な仕事は事実上長期雇用を前提としない一般職(主に女性)やパート雇用に委ねるという考え方でした。

上記の前提が崩れ、夫婦共働きがあたりまえ、単身者や一度家庭に入った女性の雇用が増加している現在、「生活の糧」の考え方も、「働く意欲づけ」の考え方も必然的に多様化しています。

このように働き方、働く側の意識の多様化に伴って、従業員の生活保障の考え方も必然的に多様化していくものと考えられます。

従来型の「一般職」や「パート雇用」といった受け皿だけでは全く不十分であり、

人材区分起点の人事・給与管理システムへの転換

が必要となります。

人材区分の整理、明確化 → 人材区分に応じた給与水準の管理へ

人材区分とは「期待する仕事内容」「労働時間」「雇用期間」などに応じて、自社にとって必要な人材を分類、区分したものを指します。
会社には様々な仕事があります。比較的定型化された仕事もあれば、高度な企画、開発能力が求められる仕事(一定の育成期間は必要)もあります。1日8時間、1週40時間のフルタイム勤務が必要な仕事もあれば、それにこだわらない仕事もあります。また、必要なときに必要な期間だけ雇用したい人(仕事)もあれば、中核人材として長期にわたって雇用したい人もあります。

この人材区分を前提としたとき、給与水準は人材区分ごとに根本的に異なるものとなります。ある人材区分は1人世帯の生計費までは保障する(フルタイム勤務の場合)、別の人材区分は経験年数10年程度(モデル年齢30歳前後)で3人世帯の生計費までは保障する、といった全く異なる給与水準の管理を行うということです。

自社における人材区分を整理、明確化し、それに応じた給与水準の管理を行うということは、従業員が選択した働き方に応じて納得できる給与水準の管理を行うこと → 生活保障と能力主義、貢献度主義の両立を図る考え方であるということができます。

まとめ

働き方、働く側の意識の多様化に伴って、従業員の生活保障の考え方も必然的に多様化していきます。また、納得できる待遇を得られるのであれば、自分自身の能力や家庭環境などをふまえて多様な働き方を選択できるほうが働く意欲づけにもつながっていきます。
「期待する仕事内容」「労働時間」「雇用期間」などに応じて自社にとって必要な人材区分を明確化し、人材区分に応じた給与水準の管理を行うことが必要です。
このことは、従業員が選択した働き方に応じて納得できる給与水準の管理を行うということであり、「生活保障と能力主義、貢献度主義の両立を図る」考え方であるということができます。
旧来型の正規・非正規といった雇用形態起点の人事・給与管理システムとも一刻も早く決別すべきでしょう(この点については2017年2月号で解説していますので、是非ご覧ください)。

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