前月号で述べたとおり、社員が働いてくれたことに対して報いるのは基本給をもって行うことが大原則です。
従って、基本給の決定基準は「仕事の対価」が基本となります。その仕事の難しさや責任の重さに基づいて基本給を決定していくということです。
しかし、この「仕事の対価」だけを基準として基本給を決めていくと様々な不都合が出てくる場合があります。
例えば多くの会社では定期昇給のしくみを設けて1年に1回、基本給を昇給させています。毎年毎年仕事の難しさや責任の重さが上昇していくことは稀でしょう。これは多くの会社では「仕事の対価」だけではなく、他の要素も取り入れて基本給を決めていることを示しています。「仕事への習熟度合い」や「社員の意欲を引き出す」といった要素です。
また、この定期昇給においては、人事評価の結果が著しく悪い場合を除いて、合格点に満たない評価であっても一定の昇給を行っている会社も多く見られます。基本給の自動昇給ともいえるしくみです。基本給の内訳として年齢給のしくみを設けている会社もこの中に入ります。特に新卒者をはじめとする若年層を採用して内部で育成していくことを基本に据えている会社で多く見られます。これも「仕事の対価」だけではなく、他の要素も取り入れて基本給を決めていることを示すものです。人材の育成には一定の時間が必要であり、そのためには「人材の定着」や「生活に要する費用の上昇」も基本給を決めていくうえで必要な考慮要素であることを示しているものと考えられます。
このように基本給の決定基準を考えるうえで重要なのは、自社における「補正要素」を正しく見極めることです。
また、この「補正要素」は全社員共通である必要はなく、階層や職種によって異なる場合も当然あるでしょう。
自社における基本給を職務給と呼ぶのか、職能給と呼ぶのか、能力給と呼ぶのかは呼称の違いだけであり、それだけで何かが変わるということはありません。
当社においてこの基本給水準をもらっている人にはこのような実績を上げ、またそのためにはこのように行動してほしいということがよくわかるように人事評価の基準を通じて示すことのほうが大切です。