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第89回  2017年10月号

〜「評価」から「規範」へ〜

「評価」のみに偏っている現実

10月となり、多くの会社で人事評価の季節を迎えていることと思います。評価者を対象とした研修の依頼もこの時期には多くなります。研修の場を通じて、評価者の意識が「評価」のみに偏っており、評価の基準やその結果を従業員教育のよりどころとして十分活用できていないと感じる局面がまだまだ多くあります。例えば次のような場合です。

例1)部下、さらには評価者自身に適用される評価基準の内容を研修の場で初めて見た。

例2)部下に対して評価基準を公開してはいけないという常識を持っている。

例3)ある評価項目についてA、B、C、Dといった評価ランクの判断基準については数値などの明確な基準を強く求めるものの、その評価項目がそもそも何を問うているのか?についてはあまり関心がない。

例4)会社が定めている評価基準よりも自分自身の評価基準を優先して評価しようとする。

なぜ「評価」するのか?

人事評価の目的には当然のこととして、「部下の実績や能力を測定して、昇給や賞与などの処遇に反映させること」があります。昇給や賞与などの動機づけを与えることで、部下が実績や能力を高めるように仕向けるためです。ではなぜそのように仕向けるのか?それは「目指す会社を実現するために従業員の行動の方向性を一致させるため」であり、これこそ会社における評価の本質であるということができます。

このように考えると、

人事評価の基準とは、自社の理念、基本的価値、基本戦略を具体化した行動「規範」でなければならないということができます。部下の実績や能力といった過去の結果の測定のみを目的とした「評価」は、目指す会社の実現という未来につながりません。この未来につなげるためのプロセスを示すものこそ上記「規範」としての人事評価の基準なのです。

規範 → 定着 → 文化形成へ

評価者をはじめとする全従業員が人事評価の基準を自社の「規範」を定めたものであるという意識を持ったとき、人事評価の基準は自然と部下あるいは自分自身を育てるためのよりどころとして機能するようになります。この段階に到達してはじめて人事評価の基準が「定着した」ということができます。そのとき、「当社においては何が正しく、何が正しくないのか」が企業文化となり、容易に他社が真似ることができない力の源泉となるのです。

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