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第112回 2019年9月号

〜定期昇給と昇格昇給〜

はじめに

定期昇給とは基本給に代表される本俸について毎年1回など定期的に行われる昇給のことをいいます。
昇格昇給とは資格・等級などに代表される社員の待遇決定の位置づけが上昇したときに限って行われる本俸の昇給のことをいいます。

定期昇給と昇格昇給のあり方、組み合わせ方について、給与理論先行型で一律に決定してしまう、という例があります。
例えば次のとおりです。

〜従来型の正社員の職能給理論〜

・社員の職務遂行能力を7〜10段階程度の職能資格に区分する →高能力=高資格。

・高能力=高資格なのだから、*定期昇給額、昇格昇給額ともに高資格になるほど高額であるべき。*社員の能力開発意欲、チャレンジ意欲を高めるために定期昇給よりも昇格昇給にウエイトを置くべき。

〜職務給理論〜

・社員が担当している仕事の価値を評価し、複数段階の職務等級に格付ける。 →高価値=高等級。

・高価値=高等級なのだから、*職務等級が上昇しない限り昇給は行うべきでないため、定期昇給の制度は設けない。

このように定期昇給と昇格昇給のあり方、組み合わせ方を給与理論先行型で一律に決定してしまう前に、定期昇給と昇格昇給それぞれの持つ意味について考えてみる必要があると思います。

定期昇給、昇格昇給それぞれの持つ意味

昇格昇給から考えてみたいと思います。
昇格昇給とはどのような給与理論を採るにせよ、社員の能力、実力などが1つ上の段階に上昇した場合に行われるものです。従って社員の仕事の価値も上昇します。給与は仕事の対価ですから、本来昇給とは昇格昇給に限られる、ということが基本になると考えられます。

しかし、現実には昇格昇給だけでは実現することができない「昇給させる目的」というものが存在します。

〜「昇給させる目的」の例〜

・昇格を伴うほどのものではないが、習熟、経験による能力の向上は現実に存在し、それに報いたい。 ・1年間の社員の努力に報いることで意欲の維持、向上を図りたい。 ・給与水準が一定の高さに到達するまでは社員の生活保障の観点から昇給させたい。 ―新卒・総合職の給与など。

定期昇給とは、上記の例のように昇格昇給だけでは実現することができない「目的」を補うことにその本来的な意味がある、と考えられます。

年齢層、階層、雇用形態などに応じた最適な選択を

このように定期昇給、昇格昇給それぞれの持つ意味を考えてみると、そのあり方、組み合わせの仕方は給与理論先行型で一律に決定してしまうべきものではないと考えられます。
具体的には、昇格昇給を昇給の基本とはしつつも、年齢層、階層、雇用形態などに応じて昇格昇給を補う目的の存否、その必要性の程度を考慮して最適な選択をするべきである、ということです。

〜具体例〜

・総合職・若年・管理職登用前の層は生活保障を行う目的から定期昇給にウエイトを置く。 ・中高年・管理職層は昇格昇給にウエイトを置き、定期昇給は必要最小限度にとどめる。 ・店舗、工場などの現業に従事する従業員については、求める能力・スキルの段階を細分化し、半年に1回昇格のチャンスを与えたうえで、昇格昇給一本に絞る など。

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