事例解説

ホーム > 事例解説 > 第90回 2017年11月号

第90回  2017年11月号

〜絶対考課による人材育成について考える〜

ある研修会での質問

先日、ある会社の人事考課者研修会で次のような質問を受けました。 質問者は小売店舗の店長です。

・最近は販売経験なしの人でも採用しないと必要な人手が確保できない。 ・部下の中には実力ゼロの状態からスタートして、接客力などを一定水準まで伸ばすことができた者もいる。ただし、その水準は会社が求める接客力などの水準には到達していない。 ・このような場合の評価はやはり「合格水準には到達していない」という評価とせざるをえないのか?

私(当研究所代表、鈴木 茂)は次のとおり回答しました。

・結論はそのとおりで、「合格水準に到達していない」評価となる。 ・ただし、それは現行の人事考課制度を今後も継続した場合の話であり、今後制度が変われば結論は異なるものとなる。 ※該当の会社では人事考課制度の改定を現在進行中ですが、詳細はまだ社員に公表していません。 ・従って、現行制度による考課が行われることが決定している次回の人事考課までの間は、*本人に適用される人事考課基準の中身(会社が求める接客力などの水準)を入社時によく見せて、*その水準に到達できるように指導してあげることが正しい愛情の注ぎ方ではないかと考える。

絶対考課による教育

社員一人ひとりの能力を、会社が求める水準まで伸ばすためには絶対考課による教育が必要であると考えます。上記質問の例では会社として「当社としてはお客様に対してここまでのサービス品質を求める」という定義が明確に決まっています。その品質のサービスが提供できてこその「その会社の店舗」なのです。がんばったから、ゼロからよく伸ばしたから、という理由で合格の評価を出していては、いずれその会社の「目指す店舗」は1つもなくなってしまいます。絶対考課にすると昇給や賞与の原資に制限がかけられなくなると心配される方もいらっしゃいますが、昇給や賞与の総原資さえしっかりと管理しておけば問題が生じることはありません。同じ評価であっても、年度によって昇給額や賞与額が異なることが発生しうる、というだけです。

むしろ

絶対考課による教育を成功させるポイントはただ1つ、会社が求める水準の明確化です。

多様な人材を戦力化するために

質問で取り上げた会社の場合もそうですが、今後はこれまでは自社に迎え入れてこなかった人達も、適性・資質のある人は積極的に取り込んで育成していくことがますます必要となってきます。“多様な人材”というと抽象的ですが、これまでよりも育成や労務管理に手間のかかる人達も当然含まれていると考えなければなりません。それに合わせた人事制度構築も当然必要となってきます。例えば、経験者のみを採用して短期間で戦力化できることを当然の前提としている人事制度だけでは今後は人材力で遅れを取ってしまうことでしょう。

自社における人材区分と求める能力の水準を明確化し、人材区分ごとにどのように募集をかけ、適性・資質を見極めたうえで育成していくのか?このような視点に立った人事制度のみ、今後は実用性のある人事制度として自社の土台を支える機能を発揮してくれることでしょう。

テーマ別索引
ページの先頭に戻る

企業文化研究所 〒162-0822 東京都新宿区下宮比町2-28 飯田橋ハイタウン206号室 TEL.03-6265-0805