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第96回  2018年5月号

〜加点主義について考える〜

はじめに

考課者研修の場などで「不十分な点をどんどん減点していく減点主義ではなく、良い点を加点していく加点主義にできないか?」「何か1つ良い点があれば加点することで待遇を上げるようなしくみにできないか?」という声を聞くことがあります。そこで今回はこの「加点主義」について考えてみたいと思います。

評価の見せ方を加点主義とすることはできるが、待遇決定を完全に加点主義とすることはできない

2012年3月号で解説していますが、評価の基準は“縦”に展開する場合と“横”に展開する場合の2つに大別することができます。それぞれの定義は次のとおりです。

“縦”に展開する場合とは

初歩的なレベルから高度なレベルへと加点主義的に判断基準を“積み上げていく”方式。

“横”に展開する場合とは

“標準”(=合格)レベルを基準として高いレベルと低いレベルを“左右に展開する”方式。

それぞれの具体例は上記2012年3月号で紹介していますので是非ご覧ください。どちらの場合が自社の人事制度により適しているのかについては一応の判断基準はありますが(2012年3月号参照)、最終的にはどちらの方式を選択しても評価制度を構築することはできます。

評価制度での加点主義、減点主義とは“見せ方の問題である”と考えます。100点満点の試験の例を思い浮かべてみてください。

評価の場合、結果を本人の待遇に反映させる必要があります。その際、待遇増・減の判断基準となるのは評価の点数ではなく、「仕事の要求水準」です。

仕事である以上、要求水準というものは必ずあります。また、待遇は仕事の対価です。本人の実績、能力が仕事の要求水準を上回っていれば待遇増となり、下回っていれば待遇減となるのです。これはどのような評価制度を採ろうと変わることはありません。

真の加点主義、減点主義とは

2015年7月号で解説していますが、マイナス評価(仕事の要求水準を下回っている評価)も本人の育成や人材活用に積極的に活かしていくべきであると考えます。
若い人材がマイナス評価を続けているにもかかわらず、全く異動を行っていないというようなことはありませんか?また、標準の枠からは外れているが、何か1つ優れた能力をもって会社に大きく貢献している人材については専門職制度の創設などを検討してもよいでしょう。
このようにマイナス評価も人材の育成や活用に積極的に活かしていく考え方こそ真の加点主義であると考えます。これとは反対に、ミスをした者、一度でもマイナス評価を取った者を会社の戦力からどんどん間引いていく考え方こそ真の減点主義であると言えるでしょう。

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