
定昇とは定期昇給を略した言葉です。
多くの会社では1年に1回、基本給を昇給させます。定昇とはこのことを指します。
何に基づいて基本給を昇給させるのかは会社や社員の階層によって異なります。能力や実績を重視する会社もあれば、管理職層については職務の難易度や役割、責任の重さを重視する会社もあります。また、基本給を年齢給と能力給に区分したうえでそれぞれ異なる要素によって昇給運用を行っている会社もあります。
このように定昇とは自社の基本給運用の考え方に基づいて定期的に基本給を昇給させることをいいます。
このことによって社員の意欲を引き出すとともに、社員の生活を維持し、人材の定着を図っていくことをねらいとしています。
特に新卒者をはじめとする若年層を採用し、社内で育成していくことを基本に据えている会社では、定昇は必須のしくみであるといえます。
ベ・アとはベース・アップを略した言葉です。
給与の基本部分である基本給を引き上げることを指します。
基本給を引き上げる、昇給させるという点では定昇と同じですが、次の点で定昇とベ・アは異なります。
| 定昇 | ベ・ア | |
|---|---|---|
| 定期的かどうか | ○ | × |
| 社員個々人による差が生じるかどうか | ○ | × |
定昇は1年に1回など、定期的に行われるのが原則ですが、ベ・アはそのようなことはありません。会社の今後の収益力を基本として、実行可能と判断できる場合に限り行われます。
また、定昇は昇給額に社員個々人による差が生じます。人事評価の結果や社内での階層、年齢による差などです。差が生じる要因は定昇を決定する要素によって異なります。一方、ベ・アは社員個々人による差が生じることはありません。今現在もらっている基本給が同じであればベ・ア後の基本給額は同じとなります。図で示すと次のとおりです。

このようにベ・アとは、会社の今後の収益力を基本とし、実行可能と判断できる場合に限り行われる基本給全体水準の引き上げのことをいいます。
ベ・アは採用競争力を強化し、優秀な人材の獲得、定着を図っていくことをねらいとして行われます。
賃上げとは社員の賃金総額を引き上げるすべてのことを含みます。
従って、定昇、ベ・アはもちろんのこと、昇格・昇進に伴う基本給の昇給や手当の増額も含めて考える必要があります。
図にすると次のとおりです。
賃上げ |
定昇 |
定昇以外の基本給の昇格昇給など |
|
ベ・ア |
|
手当の増額…昇進に伴う役職手当の増額、扶養家族の増加に伴う家族手当の増額など |
|
手当の改定…手当金額の引き上げ |
定昇→昇格昇給→手当の増額の順に進めていって、さらに実行可能と判断できる場合にはベ・アもしくは手当の改定を行うことになります。
今後の人材獲得競争のことを考えればベ・アは非常に重要です。しかし、それは毎年の定昇や昇格昇給、役職手当の増額などを行ったうえで実行すべきものです。大幅なベ・アを一度行ってもその後定昇や昇格昇給などが行われなければ社員の意欲を維持し、人材の定着を図っていくことはできなくなってしまうからです。