
ベ・アとはベース・アップの略語であり、基本給の水準を引き上げることを指します。
能力や実績に応じた昇給とは異なり、基本給の現在の金額などの条件が同じであれば引き上げられる金額は同じです。
ベ・アは社員の待遇向上をねらいとして実施されます。
賃金表とは能力や実績に応じた基本給の昇給ルールを定めた書式です。年齢や勤続年数を昇給の判断要素とすることもあります。
賃金表の定め方には様々な考え方がありますが、


の2つの昇給ルールを定めていることはほぼ全ての賃金表に共通しています。
例を示すと次のとおりです。

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1等級
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2等級
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… |
| ※ | 「等級」とは基本給の水準を管理する区分です。 会社によって様々な呼称があります。 |
| ※ | 「号俸」とは毎年の昇給額(定期昇給額)を決定するための区分です。 能力や実績などの昇給の判断要素とその結果に応じて個人別に上がる号俸数は異なってきます。 |
| ※ | 上記の例では1等級6号俸230,000円→2等級1号俸240,000円に昇格したときに、10,000円の昇給がありますが、これが昇格・昇進した場合の昇給額(昇格昇給額)です。 |
前述のとおり、ベ・アとは基本給の水準を能力や実績などとは関係なく引き上げることです。条件が同じ社員どうしでは引き上げられる金額は同じです。
従って、ベ・アは賃金表を書き換えることによって行うのが簡便かつ合理的ということになります。
例を示すと次のとおりです。

| ベ・ア前 | ベ・ア後 | ||||||
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1等級
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2等級
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書き換え
…
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1等級
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2等級
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…
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| ※ | 1等級、2等級ともに1,000円のベ・アを行った場合。 |
| ※ | それぞれの号俸を1,000円ずつ引き上げた賃金表に書き換える。 |
| ※ | これによって、ベ・ア前と同じ等級・号俸に当てはめればベ・ア後の基本給額はすぐに決定できる。 |
1990年代半ばまではほぼ毎年のようにベ・アが行われており、上述したような賃金表の書き換えによってベ・アが実施されていました。
しかし、その後約15年程度の間、ベ・アが行われない時代となりました。そしてこの間は賃金表をルールどおりに運用することができない会社も続出しました。
2013年頃からベ・アを行う会社も多くみられるようにはなりましたが、中堅中小企業においてはかつてのように毎年のようにベ・アを実施するということは困難であり、それは今後もしばらく続くものと考えられます。
3年〜5年程度に1回のベ・アということになりますと、ベ・アと同時に賃金表の見直しも行う必要が高まるものと考えられます。
上述した定期昇給額や昇格昇給額の見直しに加えて、職制や等級の段階数から見直しを行うなどです。
これは単なるベ・ア=賃金表の書き換えではなく、給与制度そのものの変更ということができます。
自社において実施しようとしていることの真の意図がベ・ア=賃金表の書き換えにとどまるのか、給与制度そのものの変更まで伴うものなのか、よく見極めてから計画を立てることが大切です。