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第170回 2024年7月号

〜基本給の運用ルールの詳細を決める(その1)〜

はじめに

前月号で取り上げた「モデル賃金表」は会社の期待どおりの実績を上げ、順調に月給総額が上昇していった場合の賃金表です。

しかし、実際には社員個々人の実績やポストの空き状況などの事情からモデル賃金表どおりに月給総額、基本給は上昇しません。

このように社員個々人の実績の違いなどに応じて基本給をどのように運用していくのかについてはさらに詳細ルールを定めておく必要があります。

この詳細ルールを定めた表が実際の実務で用いる「賃金表」となります。

今回以降ではこの「賃金表」を取り上げます。

評価の反映方法(定期昇給の考え方)

社員個々人の実績の違い=評価をどのように基本給の運用に反映させるのかをまず取り上げます。

前月号でも述べたとおり、基本給の昇給は「定期昇給」と「昇格昇給」に区分することができます。

定期昇給とは、自社における基本給管理区分(資格、等級など)が上がらなくても、1年に1回など定期的に行う基本給の昇給のことをいいます。

昇格昇給とは、この基本給管理区分が上がった場合に限って行う基本給の昇給のことをいいます。

今回は定期昇給について取り上げます。

定期昇給については考え方を2つに大別することができます。

定期昇給の考え方 1

「モデル賃金表」の基本給の金額1マス分の上昇を、評価の段階数分だけさらに細分化する

例

評価の結果に応じて、

S評価 10段階昇給 250,000円 270,000円
A評価 8段階昇給 250,000円 266,000円
B評価

(会社の期待どおり)

5段階昇給 250,000円 260,000円
C評価 3段階昇給 250,000円 256,000円
D評価 昇給なし 250,000円 250,000円のまま

とする

※なお、C評価、D評価については「○○段階引き下げ」とすることも可能です

定期昇給の考え方 2

「モデル賃金表」の基本給の金額をそれぞれ評価の段階数分だけ増額、減額する

例

直近の評価の結果に応じて、

S評価 250,000円 270,000円
A評価 250,000円 266,000円
B評価

(会社の期待どおり)

250,000円 260,000円
C評価 250,000円 256,000円
D評価 250,000円 250,000円のまま昇給なし

とする

「考え方1」は現状の基本給を起点として評価の結果に応じて基本給を昇給(あるいは減給)させるものであり、社員にとってわかりやすい考え方であるといえます。一方、一度C評価やD評価をとってしまうと、B以上の評価をとりつづけている人になかなか追いつけなくなってしまうという面があります。

「考え方2」は直近の評価の結果に応じて基本給が一律に定められているものであり、過去のC評価やD評価の結果を引きずりません。一方、C評価→C評価、D評価→D評価と悪い評価を連続しても基本給が昇給してしまうという面があります。

例

1年経過後C評価 2年経過後C評価 256,000円 266,000円

1年経過後D評価 2年経過後D評価 250,000円 260,000円

これを避けるためには上の例では例えば「D評価の基本給は250,000円のまま毎年固定してしまう」といった処置をすることとなりますが、年数が経過すればするほどB評価以上の基本給との差が拡大していくこととなりますので、現実にD評価をつけることが極めて難しくなることは避けられません。

例

従って、「考え方2」の上述した問題点を上回る明確な理由や目的がない場合には「考え方1」を優先的に考えるべきでしょう。

例えば、定年後再雇用者のように年齢の上昇に伴う個人の能力差が生じやすいような場合には、「考え方2」のほうが直近の評価のみによって基本給が決まりますので妥当と考えられる場合もあるでしょう。

次回以降では定期昇給の上限設定や昇格昇給の考え方などを取り上げていきます。

引き続きよろしくお願いいたします。

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