短期的な成果を重要視する成果主義の下では、人材を育て、活かすという考え方はどうしても二の次とならざるをえません。しかし、多くの入社希望者を集め、堅調な業績を上げている中小企業は、中長期の雇用を前提として人材を育て、活かすという経営を追求しているものです。また、55歳定年ははるかに昔のこととなり、現在では実質65歳までの継続雇用が義務づけられていることを考えれば、改めて人材を有効に活用するという視点の重要性を認識する必要があります。
そこで今回は、自社の人材活用のどこに問題があるのかを診断する方法について考えてみたいと思います。
次の図を見てください。
これは採用から退職、再雇用までの人材活用にかかわる諸活動を図式化したものです。「―」は相互に関連があることを示しています。これは自社の人材活用のどこに問題があるのか?をとらえるにはとても有益なものです。例えば、賃金制度が整備されていないという場合には「賃金」の上に「×」と書きます。人事考課制度はあるが十分なものとはいえない場合には「人事考課」のうえに「△」と書きます。
人事制度が整備され、運用もされているという会社の場合、「賃金」や「人事考課」の上に「×」や「△」が入ることはありません。しかし、次のような問題点が見られることは比較的多くあります。
①について
人事考課の基準がよく整備されており、適正な評価が行われている会社においても、その人事考課が教育に十分に活かされているか?というと十分でないケースも実は多く見られます。教育において最も重要なのはOJTと呼ばれる日常業務を通じた教育です。OJTは実際に教育にあたる現場管理者の力量に大きく依存したものです。この現場管理者に対する指導者としての教育が不十分であればOJTは有効に機能しません。また、2015年5月号でも触れましたが、人事考課の基準が部下に周知されておらず、OJTのよりどころとして活用されていなければ、現場管理者による教育は会社が大切にしている基本的価値を反映したものとはならないでしょう。それでは会社が期待する人材づくりに直結しない教育となってしまいます。
②について
人材を有効に活用するということは、適材適所の配置をするということです。しかし、人事考課の結果をどれだけ本人の適性を把握する材料として活用することができているか?一度振り返ってみてください。35歳未満の比較的若い人材について、低い評価が続いているにもかかわらず、全く異動を行っていない、というようなことはありませんか?職種は変更しなくても、上司を変える、担当顧客を変えることによってそれまでとは全く違う実績を上げる場合も現実にあるのです。