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第43回  2013年12月号

〜賞与支給のあり方を考える〜

はじめに

従来、賃金制度を考えるうえで中心に置かれてきたのは本俸である基本給でした。賞与は基本給の〇ヵ月分(〇は会社業績による)を標準としつつ、人事考課に応じて増減を行う、というルールを定めている会社が現在でも多いものと考えられます。しかし、会社の業績が基本的には右肩上がりであることを前提にはできない今、従業員に対するインセンティブ(動機づけ)として上記のような賃金制度、賞与支給のあり方は見直す必要に迫られていると考えます。

そこで今回は、今後の賃金制度を考えるうえでますます重要性を増していくであろう賞与支給のあり方について考えてみたいと思います。

基本給と賞与の違い

会社と従業員との間は労働契約で結ばれています。従業員は会社の指揮命令を受けて労務を提供し、会社は対価として賃金を支払います。現在労働時間の規制緩和が議論されていますが、いくら規制が緩和されても会社と従業員との間が労働契約で結ばれている限りこの基本的な構造に変わりはありません。そしてまた、基本給も賞与も賃金であることに変わりはありません。しかし、基本給は、会社が期待した成果を従業員が上げることができなかった場合でも、すでに働いた時間分の金額を減額することはできません。これに対して賞与は、一定の評価期間を定めて従業員個々人の成果を評価し、会社が期待した成果を従業員が上げられなかった場合には、0円とすることも法的には可能です。同じ賃金でも両者の間には大きな違いがあるのです。

賞与独自の支給基準を持つことが大切

はじめに>でも述べたとおり、従来の賃金制度は基本給中心主義でした。会社の業績が基本的には右肩上がりの時代であれば、基本給のベース・アップや定期昇給、さらには昇格した際の昇給などを通じて従業員全員に報いることが可能であり、インセンティブ(動機づけ)としても十分であったと考えられます。賞与も基本給の〇ヵ月分を標準としつつ、人事考課に応じて(若干の)増減を行う、という方式の方が従業員全員の士気を高めるうえで効果的であったともいえます。しかし、会社の業績が基本的には右肩上がりであることを前提にすることができなくなった今、昇給、昇格、賞与をほぼ同じ基準(人事考課の内容)に基づいて決定することはマイナスの効果の方が大きいものと考えられます。基準の内容が短期的な成果のみを重視するものであれば、昇給や昇格、さらには役職への登用について適切な運用ができなくなるおそれが高くなります。基準の内容が中長期的に見た人材育成を重視するものであれば、賞与のインセンティブ(動機づけ)の効果が薄れてしまいます。<基本給と賞与の違い>で述べたとおり、成果主義は本来賞与にこそなじむものです。

今後の賃金制度を考えるにあたっては賞与支給のあり方を基本給のあり方を考えるのと同じくらいのウエイトで検討する必要があるといえます。

具体的には賞与について独自の支給基準〜計算式と評価項目〜を策定するということです。

まとめ

従来、賃金制度を考えるうえで中心に置かれてきたのは本俸である基本給でした。会社の業績が基本的には右肩上がりの時代であれば、基本給のベース・アップや定期昇給、さらには昇格した際の昇給などを通じて従業員全員に報いることが可能であり、インセンティブ(動機づけ)としても十分であったと考えられます。賞与も基本給の〇ヵ月分を標準としつつ、人事考課に応じて(若干の)増減を行う、という方式の方が従業員全員の士気を高めるうえで効果的であったともいえます。しかし、会社の業績が基本的には右肩上がりであることを前提にすることができなくなった今、昇給、昇格、賞与をほぼ同じ基準(人事考課の内容)に基づいて決定することはマイナスの効果の方が大きいものと考えられます。成果主義は本来賞与にこそなじむものです。今後の賃金制度を考えるにあたっては賞与支給のあり方を基本給のあり方を考えるのと同じくらいのウエイトで検討する〜賞与独自の支給基準を策定する〜必要があるといえます。

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