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第52回  2014年9月号

〜新卒を採って時間をかけて育てるメリット〜

はじめに

新卒者と中途採用者(経験者)を比べてみたとき、採用時点では後者の方が会社の事業・業績への貢献度は高いのが一般的でしょう。しかし、優良と言われる企業の多くは新卒採用への強いこだわりを持っています。なぜ短期的には割の合わないことをするのか?今回はこの点について考えてみたいと思います。

新卒採用へのこだわりの強さ

「通年採用」「外国人採用」といった採用形態が最近では多くの会社で見られるようになりました。しかし、学生に人気のある大手企業の多くが大学在学中のかなり早い時期から大学生の採用を激しく競い合っているという現実も存在します。また、中小企業においては「大学新卒者の採用ができる」ことが一つのステータスであり、また"あこがれ"であるという事実も存在します。採用形態が多様化する中でも優良企業の多くは新卒採用への強いこだわりを持っています。なぜでしょうか?

それは「新卒採用が自社にとって“最も質の高い人材を”“一度に一定量確保できる”」からだと考えます。優良企業に入った人はなかなか会社を辞めません。中途採用で質の高い人材を確保しようとしても新卒時に比べれば数は圧倒的に少なくなっています。根底には「いい会社に入って、安定した生活を送りたい」という根強い意識があるものと考えられますので、この状況はそう簡単には変わらないものと考えます。

そして無限定正社員の人事制度が主流になる

新卒者は資質としては高いものを持っていても、すぐに会社に貢献してはくれません。

時間をかけて育てる必要があります。

時間をかけて一人ひとりの適性を見極め、専門分野を絞り込んだり、幹部人材としての適性を見極めていく必要があります。このことは会社側から見れば「社員の仕事や勤務地を最初から限定せずに、幅広い経験を積ませる中で徐々に絞り込んでいきたい」という欲求につながります。会社の中核を担う基幹人材についていわゆる「無限定正社員」と言われる人事制度が主流になるのは必然の結果であると考えます。

仕事や勤務地を限定するいわゆる「限定正社員」の人事制度は、次の3つの場合に活用が想定されるものと考えます。

1 仕事と家庭生活との調和(ワークライフバランス)の観点から、無限定正社員の一時的な受け皿として活用する場合
2 高度な専門職を中途採用する場合
3 非正規社員の処遇改善を目的に活用する場合

1 は無限定正社員の一時的な受け皿ですので、2、3 とは本質が異なります。また、3 は本人も会社もそのままでは会社の中核を担う人材になりえないことは十分合意できているものと考えます。

問題は2を主流にした採用形態で会社を永続させられるか?ということです。

今会社の中核を担っている人材もやがて必ず引退します。その時常にすぐに代わることのできる人材が採れれば問題ありませんが、現実には不可能と考えます。理由は先にも述べたとおり、「いい会社に入って、安定した生活を送りたい」という根強い意識が変わらない限り、中途採用で「すぐに代わることのできる人材をいつでも採れる」状況にはならないと考えられるからです。

まとめ

優良企業に入った人はなかなか会社を辞めません。中途採用で質の高い人材を確保しようとしても新卒時に比べれば数は圧倒的に少なくなっています。根底には「いい会社に入って、安定した生活を送りたい」という根強い意識があるものと考えられますので、この状況はそう簡単には変わらないものと考えます。今会社の中核を担っている人材もやがて必ず引退します。

時間はかかっても新卒採用を通じて質の高い人材を確保し、育てておく必要があると言えるでしょう。
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