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第146回 2022年7月号

〜賞与の調整について〜

標準的な計算式は必要

人事制度を整備する目的の一つに「制度に当てはめれば8割〜9割は妥当な結果を導き出すことができる」というものがあります。

制度に当てはめたとしてもほとんど妥当な結果を導き出すことができなければそもそも制度化した意味がないからです。

社員個々人の賞与額の決定についてもこのことは当てはまります。

社員数が数十人程度までであれば会社の業績と一人ひとりの貢献度を勘案して賞与額を決定していくということもできるかもしれません。

しかし、社員数が50人、100人と増えてくるとそのようなことは現実的ではなくなります。

一定の計算式に当てはめればおおむね妥当な賞与額を導き出すことができるように、標準的な計算式を用意しておく必要があります。

ただし、「調整が入ることがある」は明記すべき

ただし、賞与についてはこの標準的な計算式を社員に公開する場合であっても、「調整が入ることがある」旨は明記しておくべきであると考えます。

賞与とは

本来業績(利益)配分であり、

当面する人事上の課題を解決するために、

ためです。

例えば営業職のように標準的な計算式では一定の業績目標の達成率によって賞与額が決まる場合を考えてみましょう。

8割〜9割は妥当な結果となるでしょうが、「前任者の活動の成果を享受している」とか、「本人の活動成果でなく、大口の引き合い案件の担当者としてたまたま指名された」という場合に、標準的な計算式に当てはめただけでは公平、公正さに欠ける、という場合も出てくるでしょう。

このような場合には調整を行わなければ社員の不満は高まることとなります。

このように賞与については相対評価、すなわち標準的な計算式に当てはめた場合の社員個々人の賞与額を比較して、評価し直す、というプロセスも必要です。

賞与が業績への貢献度に応じた配分である、という立場に立てば当然のプロセスだからです。

なお、このとき前回賞与との比較を行って調整している会社を多く見かけます。

同一人物について「前回の賞与額はこれだけだったので、今回の賞与額もそこから大きく上下しすぎないように調整する」という方法です。

当社では賞与も生活費の一部と考えている、という場合は別ですが、このような調整の方法は本来避けるべきでしょう。

社員の成長や現在の実力を反映していない結果を招くことになりますし、「序列の固定化」を招きかねないと考えるためです。

賞与の調整表から「前回賞与」の欄は原則として削除すべきであると考えます。

どこで調整するか?

会社の拠点数が少なく、社員数も150人程度までであれば役員が全社員の活動状況を把握できるものと考えます。

このような場合には

役員会調整 → 社長決定

により、賞与額の調整を行うことができるものと考えます。

しかし、反対に会社の拠点数が多く、社員数も数百人、という場合には本社で調整を行うことはむずかしくなってくることが想定されます。

このような場合には、各拠点の統括責任者〜各拠点の長(営業所長、店長など)までのどこかに調整の権限を委ねる必要が出てきます。

一方で、賞与の標準的な計算式を制度化した目的を損なうことがないようにする必要もあります。

従って、このような場合には

標準的な計算式による各人の賞与額から5〜10%程度までの原資を拠出させて

その原資の合計額の範囲内で調整の権限を与える

といった対応をとる必要があるでしょう。

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