賃金プロットとは、標準的には横軸に年齢、縦軸に金額、従業員個々人を職位や資格別に記号化して、その賃金額の分布状況をグラフ化したものです。
〜 標準的な賃金プロットの例 〜
賃金プロットはパソコン用の表計算ソフトの「散布図」を使用すれば正確かつ迅速に作成することができます。また、自社の賃金の現状を一覧化し、問題点や改善の方向性を探るうえで有効な分析手法であるため、賃金制度を見直すにあたってはほぼ例外なく用いられているといってもよいでしょう。
そこで今回は、この賃金プロットを有効な分析手法として活用するための留意点について解説してみたいと思います。
賃金プロットの標準的な活用方法は次の2つです。
①については賃金プロット図の上に比較対象として選択した世間水準の賃金データを重ね合わせて、自社の賃金水準の現状把握を行います。
〜 例 〜
②については、例えば上の例でいえば、
などといった自社の賃金の運用傾向を把握することを指します。
このとき、①、②の分析を有効なものとするためには、
ことが必要です。
ためです。以下例を使って説明します。
①について
例えば、成果主義賃金制度の下で賃金額が低いままの従業員が多数発生し、結婚して子供を持つということがそもそも不可能な水準になってはいないか?という問題意識を持っている会社があるとします。このような会社が“何を知りたいのか?”といえば、
ということです。従って、選択すべき世間水準は“生活費”ということになります。それ以外の例えばモデル賃金などとの比較を行ってもあまり意味はありません。
②について
例えば、昇給のルールなどの賃金制度が整備されておらず、過去どのような考え方で昇給運用を行ってきたのか?確認したいという会社があるとします。このような会社では〜例〜で示したようなプロット図をいくら眺めても答えを導くことはできません。プロット図の標準的な構成要素そのものを変えて分析することが必要です。例えば、
変えて分析してみると次のような結果が導き出されることがあります。
※必要に応じて過去3〜5年間程度遡って上記分析を行います。
このような結果が導き出された場合、この会社での過去の昇給運用の考え方は、
ということができます。
賃金プロットを用いた分析は、賃金制度を見直すにあたってほぼ例外なく行われています。しかしそれだけにはっきりとした目的を持たずに、単に形式的なものにとどまっていないか?注意する必要があります。