「人事考課の目的は教育にあり、給料を決めるためではない」「結果は給料に反映させるが、目的と結果を取り違えてはならない」とは、長年強調されてきた言葉です。しかし、現実はどうでしょうか? 考課をする上司も、考課をされる部下も「人事考課=給料査定」の意識からなかなか抜け出せないというのが実態ではないでしょうか。
そこで今回は、なぜ「人事考課=給料査定」の意識からなかなか抜け出せないのか? どうすれば人事考課を人材育成へつなげることができるのか? について考えてみたいと思います。
これは2つの段階に分けて考えることができます。
会社の規模の拡大に合わせて1つ目の段階から2つ目の段階へと意識や関心がシフトしていくのが通常のケースですが、ともに「人事考課=給料査定」のためという運用をしてしまっているのです。このような状況下では、「人事考課の目的は教育にあり、給料を決めるためではない」「結果は給料に反映させるが、目的と結果を取り違えてはならない」との言葉が考課者に甘い人事考課をさせないようにするための“添え物”程度の意味しか持たなくなるのも当然といえます。
上述した「誰もが自分の給料を上げたいと思って行動する」というのはそのとおりですし、モチベーションの低下を招かないように「公平な人事考課」に尽力することも必要なことです。しかしながら、給料を上げたいと思うなら良い結果を出してから、というのが当然ですし、いくら公平な人事考課を行っていたとしても良い結果を生まなければ経営活動の一つとして人事考課を行う意味はありません。ここでいう「良い結果」とは、“高いレベルの業績”を“継続する”ことですが、それを生み出すことができるのは「正しいプロセス」があってこそです。「正しいプロセス」なくして偶然に出た結果というものは長続きしないものです。「正しいプロセス」とは“こうすれば良い結果を生み出すことができる”という「仕事の型」のことを指します。
この理解が得られれば部下もまずは「正しいプロセス」を繰り返すことに意識が集中するようになります。そのために必要なことは次の2点に集約することができます。
1の点はクリアーしていても、2の点はできていない会社の方がまだまだ多いのではないかと考えられます。上司も部下も「良い結果」を得たいのは同じです。自分の給料を上げたいと思って行動します。そのためには「正しいプロセス」を繰り返す以外にないと気づいたときに初めて人事考課を通じた人材育成が可能となるのです。
「人事考課を通じた人材育成」という言葉は長年語られてきました。しかし、現時点においても「人事考課=給料査定」の意識から上司、部下ともに抜け出すことができていないと考えられます。「人事考課を通じた人材育成」が可能となるのは、上司、部下がともに「良い結果」を得るためには「正しいプロセス」を繰り返す以外にないと気づいたとき、です。この気づきを与えるためには
が必要であり、とりわけ2の点が重要となります。
みなさんの会社でも2の点が徹底されているかどうか、一度是非点検してみることをおすすめします。