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第41回  2013年10月号

〜機能不全に陥っている制度を立て直す〜

はじめに

「10年ほど前に成果主義人事制度を導入したが、月給の引き下げや降格などはルールで決めたとおりには実行できていない」「マイナスの評価点をつけるとすぐ月給が下がったり、降格につながるので、管理者が甘い評価しかしなくなっている」。このような相談が最近多くなってきました。どちらも制度が機能不全に陥っているということができます。

そこで今回は、このような機能不全に陥っている人事制度の立て直し方について考えてみたいと思います。

人事制度の原点に立ち返ることが大切

今から約15〜10年ほど前、多くの会社が成果主義人事制度を導入し、月給が下がるしくみ、降格も通常のこととして行われるしくみを導入しました。これらの会社では、長年続けてきた年功序列制度の結果、本人の実力、能力以上の月給を支払っているケースも多々あったことと考えられます。このような社内の状況と厳しい経済環境を生き抜くため、“リストラ目的で”このような成果主義人事制度を導入したことは当時の判断としては合理的なケースもあったことでしょう。

しかし、それから10年以上が経過した今、本人の実力、能力以上の給与を支払っているケースは激減しているのではないでしょうか?もしそうであるならば、月給の引き下げや降格をルーチン化しなければならない理由は最早存在しないと考えるべきでしょう。

そもそも人事制度は、“ いかに社員に意欲を持って働いてもらい、業績を上げてもらうか”に力点を置いて構築、運用すべきものです。

社内全体を見渡したとき、本人の実力、能力と給与とがほぼバランスしていると考えられるとき、月給の引き下げや降格というムチを常にちらつかせることは決して有益なことではないでしょう。旧来の年功序列に戻らないようにするためには、月給や資格は3年間程度本人の能力を慎重に見極めながら決め、賞与についてより成果主義の色彩を強めれば十分と考えます(この点について詳しくは2012年10月号で解説していますので是非ご覧ください)。

今の環境に合わなくなったルールを守ることに労力を投入するのであれば、人事考課基準で定めた合格点に一人でも多くの社員を近づけることに労力を投入した方がはるかに有益です。いくら立派な人事考課基準があっても、それに近づけるための日常の指導をもし管理者が行っていないのであれば、"何もやっていないのと同じ"だからです。

まとめ

人事制度の原点は、“ いかに社員に意欲を持って働いてもらい、業績を上げてもらうか”というものです。

15〜10年前とは異なり、本人の実力、能力以上の給与を支払っているケースが激減しているのであれば、月給の引き下げや降格をルーチン化しなければならない理由はありません。10年以上前の環境下で決めたこれらのルールを状況が変わった今も「制度がこうだから」という理由だけで守ろうとするのは本末転倒です。

来春以降には賃上げや優秀な人材の採用難といったことが課題となることも十分想定しておかなければなりません。人事制度も会社の経営理念といった中核部分は不変であるべきですが、給与への反映といった技術的な部分は現在そして将来を見据えて最適なものに見直しておくべきでしょう。

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