給与制度の改定を行った場合、社員一人ひとりの現行の給与額を新しい給与額へと移行させる作業が必要です。
給与は基本給と手当から構成されるのが一般的です。
新手当への移行は新しい手当額を支給することで完結するのが一般的ですが、新基本給への移行については事務的な作業だけでは完結しないことのほうが多いといえます。
そこで今回はこの新基本給への移行について取り上げてみたいと思います。
新基本給への基本的な移行方法は次のとおりです。
社員一人ひとりについて次の作業を行います。
現行の給与額 − 新しい手当額合計 = 新基本給への移行原資
新基本給への移行原資を原則としてそのまま新基本給へ移行させるが、新しい基本給の支給ルールに照らして不足が生じる場合には不足分を会社の持ち出し(新たな負担)とする
「新しい基本給の支給ルールに照らして不足が生じる場合」としては、
・新基本給への移行原資が資格や等級などの基本給の水準を管理する区分ごとに定められた新基本給の下限(最低)金額に届かない場合や
・新基本給への移行原資を新基本給の賃金表の号俸に当てはめるにあたって若干の不足がある場合
などがあります。
初めて給与制度を整備した場合など、既存の基本給の運用ルールが明確でない場合には、上述した基本的な移行方法だけでも新基本給への移行をほぼ完結できる場合もあります。
しかし、賃金表をはじめとして既存の基本給の運用ルールが明確に定められている場合には、既存の基本給の序列の逆転を招かないかにも配慮する必要があります。
合理的な理由があれば別ですが、理由なく基本給の逆転を生じさせてしまっては社員の不満を招くことになるからです。
上述した「合理的な理由のない基本給の逆転」を生じさせないためには、「組み替えで対応してよいもの」と「持ち出しで対応すべきもの」を最初に明確化しておく必要があります。
次のとおりです。
基本的な移行方法 で説明した新基本給への移行方法は、
社員の現行の給与額を新基本給と新手当に組み替える
というものです。
例えば新しい手当を設定したり、既存の手当の金額を増額したような場合には、新基本給への移行原資はその分だけ小さくなります。
役職手当を新設した、子供に対する家族手当を増額した、といった場合を想定してみてください。
役職手当の支給対象となる社員や家族手当が増額となる社員の新基本給への移行原資は支給対象とならない社員、増額とならない社員に比べて小さくなります。
多くの場合、会社としては基本給を小さくしてよいとは考えていないはずです。
このような場合には「組み替え」ではなく手当額の「持ち出し」で対応することが必要です。
一方、例えば年齢給と能力給を新基本給に一本化するというような場合には「組み替え」で対応することを原則としても妥当な結果が得られることも多いものと考えられます。
給与制度の改定を行った場合、社員一人ひとりの現行の給与額を新しい給与額へと移行させる作業が必要です。
移行方法としては「現行の給与額を組み替える方法」と「会社の持ち出しで対応する方法」とがあります。
改定の内容に応じて2つの方法を使い分けることが必要です。
どちらの方法を用いるべきかは新しい給与額決定の考え方、理由を社員に説明できるかどうかを判断基準とする必要があります。