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第63回  2015年8月号

〜解は1つではない〜

解が1つであった頃の人事制度構築の主要プロセス

90年代の初頭までは、人事制度といえば職能資格制度が唯一の解でした。解が1つ=あらかじめ決まっている場合、力点はその解の説得プロセスに置かれることとなります。私(当研究所代表・鈴木 茂)もその当時は次のようなシートを作成して、職能資格制度の説得に努めていました。

〜 例 〜

項目
考課分野
現状
考課分野の区分がない
検討事項、問題点

職層(≒年齢層)に応じた教育、指導の実施が困難になる

職層(≒年齢層)に応じた教育、指導は次のとおりとすることが適切

若年層… 能力向上に向けての意欲や態度(「勤務態度」)を重視した教育、指導
中堅層… 成果(成績)を上げるために必要な「能力」を高めるための教育、指導
上位層… 蓄積された能力の発揮による会社への貢献=成果(「成績」)を重視した教育、指導

「成績」「勤務態度」「能力」の考課分野の区分がないと、上記職層(≒年齢層)に応じた教育、指導の実施が行いにくくなる

改善の方向
「成績」「勤務態度」「能力」の3つの考課分野を設定する

これは解としてあらかじめ「成績」「勤務態度」「能力」の3つの考課分野を設定すべきである、ということが決まっているから成立する説明であるといえます。

「改善の方向」があらかじめ決まっている → 改善の方向に照らして「現状」を把握、分析する → 現状を改善の方向へと説得する理由を「検討事項、問題点」として指摘する

というプロセスです。

このプロセスは職能資格制度に限らず、今の時代でも解が1つ=あらかじめ決まっている場合には同様に行われます。

人事制度=経営理念、基本戦略の実現手段となった現在、解は多様化する

しかし、人事制度が自社の経営理念、基本戦略の実現手段となった現在、上記のようなプロセスでは対応できないことは明らかです。経営理念、基本戦略が会社の数だけある以上、その解は必然的に個別化するからです。解が個別化する時代の人事制度構築のプロセスは、

その時点における自社の人事上の課題を的確にとらえ、かつどのような考え方や行動をとることが正しいのかを社員にわかりやすく示すこと=要件定義を出発点とし → 新人事制度のあり方の構想(基本設計) → 新人事制度の詳細設計

でなければなりません。

人事制度が自社の経営理念、基本戦略の実現手段となった現在、人事制度の構築(改定を含む)とは「開発」であり、あらかじめ決まっている1つの解を説得するプロセスではないのです。当研究所が人事制度構築について請負型を基本とする理由はまさにここにあります。

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