90年代の初頭までは、人事制度といえば職能資格制度が唯一の解でした。解が1つ=あらかじめ決まっている場合、力点はその解の説得プロセスに置かれることとなります。私(当研究所代表・鈴木 茂)もその当時は次のようなシートを作成して、職能資格制度の説得に努めていました。
〜 例 〜
職層(≒年齢層)に応じた教育、指導の実施が困難になる
職層(≒年齢層)に応じた教育、指導は次のとおりとすることが適切
若年層… | 能力向上に向けての意欲や態度(「勤務態度」)を重視した教育、指導 |
---|---|
中堅層… | 成果(成績)を上げるために必要な「能力」を高めるための教育、指導 |
上位層… | 蓄積された能力の発揮による会社への貢献=成果(「成績」)を重視した教育、指導 |
「成績」「勤務態度」「能力」の考課分野の区分がないと、上記職層(≒年齢層)に応じた教育、指導の実施が行いにくくなる
これは解としてあらかじめ「成績」「勤務態度」「能力」の3つの考課分野を設定すべきである、ということが決まっているから成立する説明であるといえます。
というプロセスです。
このプロセスは職能資格制度に限らず、今の時代でも解が1つ=あらかじめ決まっている場合には同様に行われます。
しかし、人事制度が自社の経営理念、基本戦略の実現手段となった現在、上記のようなプロセスでは対応できないことは明らかです。経営理念、基本戦略が会社の数だけある以上、その解は必然的に個別化するからです。解が個別化する時代の人事制度構築のプロセスは、
でなければなりません。
人事制度が自社の経営理念、基本戦略の実現手段となった現在、人事制度の構築(改定を含む)とは「開発」であり、あらかじめ決まっている1つの解を説得するプロセスではないのです。当研究所が人事制度構築について請負型を基本とする理由はまさにここにあります。